"the Akasakan diary"    ~リトル君の赤坂日記

●ピンポンとロッキー (12月7日)

 ちょっとまえだが、テレビを見ていたら窪塚洋介が出ていた。映画「ピンポン」だ。特に見たくもなかったがせっかくなので観る。

 ストーリーは典型的なスポコン。もともと卓球の才能があって実力もそこそこあるけれどまじめに練習しない主人公の高校生が一つの敗北をきっかけに卓球への情熱を取り戻し、ライバルたちに負けまいと精進した結果、熱戦の末最後に勝利するという話。
 観ていくうちに段々テンションが落ちてきた。少しヒットしたらしいが大した作品じゃない。窪塚は確かに熱演だと思うが、別に心を打たれるわけでもない。ストーリーもありきたり。唯一つ収穫があったとすれば中村獅童で、全然周りと違う空気を発散していた。なるほど、役者の血とはこういうものかな、という気がした。

 こう書くと身も蓋も無いようで窪塚ファンや「ピンポン」が好きな方には不評だろう。でも、僕が見たところ、この作品は「マンガの映像化」でしかない。つまり「動くマンガ」であって、「映画」ではない。

 じゃあ、「動くマンガ」と「映画」とは何が違うのか。これがなかなか一口にはいえない。言えないのがもどかしくもあるのだけれども、一つ言いたいのは、この作品のカット割だ。
 映画というのは言うまでも無く映像作品だから、絵が滑らかに動いてゆく。ところが、「ピンポン」の画面構成はたびたびブツブツと不自然に千切れる。しかも不必要なほどに難しいアングルから撮ったショットがちょくちょく入り込む。まるで「こーんなこともできますよ」「こんなアングルはどうですか」と言いたげだ。そしてその珍妙な構成がもう、そのまんまマンガのカット割りなのだ。僕は原作は読んでないが、読まなくても「ああ、このシーンはきっと原作ではこう、こんなカットなんだろうな」と容易に想像できる。あと、役者についても「きっとこのキャラはこんな絵なんだろうな~」なんて、似せれば似せるほど想像できてしまう(ま、これはこれでいいのかもしれないけど)。

 当たり前のことだけども僕は原作を批評はする気は無い。むしろ、マンガとして読んだら面白いんだろうなと思うくらいだ。でも、マンガを読んで面白いな、と思って、じゃあそれをそのまま動く絵にして「映画の出来上がり」などという人がいたら、笑ってしまう。それは映画じゃないですよ。ただの「動くマンガ」。この監督は果たしてどういう魂胆でこの作品を撮ったのか。これをもって映画です、と本当に思っているのかな。ひょっとして、「動くマンガ」が出来上がることをわかっていながら撮ったのかな。

 僕は自然と「ロッキー」と比較していた。ストーリーは陳腐だけど、「ロッキー」は確かに映画史に残る作品だし、何より「映画」だ。それは「ロッキー」が映画として撮られているから、としか言えない。

 スタローンの乾坤一擲の魂の一撃。売れない自らの境遇をロッキーバルボアという一人のボクサーに投影して一気に書き上げた脚本を自ら売り込み、金が無いからと自ら主演して打った大博打。結果「ロッキー」は大ヒットするのだが、その成功は常識ではありえないことであり、まさにスタローンその人の人生はそのまま映画的な感じすらする。
 あの、フィラデルフィアの早朝の街を駆け抜け、市庁舎の階段を駆け上がり、両の拳を突き上げるシーン。エイドリアンとのスケートのシーン。老トレーナーとの葛藤と和解。試合前日に眠れず会場を見に行くシーン。そしてあの、最終ラウンドから撮っていったという、アポロとの死闘。叫ぶロッキーとエイドリアン・・・。ロッキーはスタローンそのものだ。どん底で絶望し、そこから転がり込んできた一縷の可能性に賭け、無敵の王者に戦いを挑んでいく姿に「ロッキーがんばれ!」とたかぶる気持ちを抑えられなかった人たちは沢山いた。「ロッキー」は確かに世界中の人の心を動かした。

 予算が無いので試合のシーンは撮り直しが効かない、ぶっつけ本番だったという。また観客のエキストラもそこらのホームレスをフライドチキンを食べさせてやると誘って呼び込んで経費を浮かし、撮影は行われた。失敗は許されない。そこにはボクシングという以上の緊張感がみなぎっていたことだろう。
 だからカメラワークに面白みは確かにない。演技も極上ではないかもしれない。しかし、迫力、みなぎるエネルギーははち切れるほどに画面からあふれている。ロッキーはもはや、スタローンという役者の演じている架空の存在ではなく、観ている僕らそのものになってしまう。それこそが、「ロッキー」の映画としての存在感であり、価値である。まさに「映像体験」としか言えないものを与えてくれるもの、それこそが「映画」だと思う。
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by redhills | 2004-12-07 14:20 | 映画
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赤坂日記・・・赤坂在住の"Akasakan" リトルが、東京のへそで日々の思いを綴る。
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