"the Akasakan diary"    ~リトル君の赤坂日記

●思い出の映画たち3 「殺人の追憶」

 殺人の追憶:MEMORIES OF MURDER(2003)

 監督:ポン・ジュノ Bong Joon-Ho
 製作:チャ・スンジェ
    ノ・ジュンユン
 脚本:ポン・ジュノ Bong Joon-Ho
    シム・ソンボ
 撮影:キム・ヒョング
 音楽:岩代太郎
 
 出演:ソン・ガンホ Song Gang-ho パク・トゥマン
    キム・サンギョン Kim Sang-Kyung ソ・テユン
    パク・ヘイル Park Hae-Il パク・ヒョンギュ
    キム・レハ
    ソン・ジェホ
    ピョン・ヒボン
    パク・ノシク
    チョン・ミソン

 もうそろそろうんざりしてきたが、世の中「韓流」である。僕は冬ソナすらチラリと見たきりなのでえらそうなことは言えないが、これだけは断言できる。それは韓国映画の勃興だ。
 現在の韓国映画界は1950年代の日本映画界を髣髴とさせる、黄金期を迎えていると思う。黎明期から先駆的作品を作ってきた巨匠、今まさに脂の乗り切った実力派、そして雨後の竹の子のごとく次々と現れる新しい才能たち。それらが塊となって奔流のように傑作を連発している。おそらく数年のうちに、韓国映画がカンヌあるいはアカデミー賞の作品、監督、主演男優、女優、外国語作品賞のどれかを取ると見る。

 だから今回僕が韓国映画を取り上げたからといって、それは決して「韓流」のせいではない。むしろ、「韓流」などといっていると、韓国映画で今何が起こっているのかを正しく見れなくなる。ハリウッドよりはるかに注目すべきだよ。

 というわけで、今年僕が最も衝撃を受けた映画2本のうちの1本、「殺人の追憶」を。

 評判は聞いていたので大いに期待して観たのだが、これほど期待にたがわぬ出来栄えだった映画は久しぶりだった。2003年の東京映画祭で絶賛され、アジア映画賞を受賞。
 パンフレットはもちろん賞賛の嵐なのだが、その中での白眉は阪本順治監督のコメント。僕はこれに付け加える言葉を知らない。いわく、「映像美と画角、俳優の演出、俳優の演技、キャストの配置、伏線の張り方、小道具の使い方、ストーリーテリング、ユーモアのセンス、音楽と音、アクション、時代性、すべて、計画されて、すべて成功している。黒澤明の孫が、日本で生まれず、韓国で生まれた。まいった。」

 まさにおっしゃる通り。観終わってしばし雷に打たれたように朦朧とする中で、今俺が体験したのは何なんだろうか、とぼんやりと考えた。感動? Oui、悲しみ? Oui、喜び? Oui、衝撃? Oui、それら全部が正解だったが、それら全部を合わせても完全ではない、何かが残った。映画と呼ばれるもののみが成せる何かを自分は確かに体験したと感じた。
 エンターテインメントと呼ばれる要素のすべてを選び抜いて鍋にぶち込み、じっくり煮込み、細心の注意を払って味付けし、ベストのタイミングで差し出す。喜劇と悲劇、沈黙とアクション、正義と狂気を一つにして破綻させないどころか相乗効果を挙げて傑作にしてしまう、まさに彼、ポン・ジュノは黒澤の後継者だ。そして末恐ろしいことだが、何とこれが彼の2作目なのだ。それも1作目はシュールなコメディー(「ほえる犬は咬まない」)であり、まったくテイストの違う作品なのである。(ちなみに、僕が韓国の小津になるかもと感じているのは「子猫をお願い」のチョン・ジェウン監督)

 まず映画というもので、出だしほどその監督の実力(センス)が出る部分はないと思うのだが、「殺人の追憶」は、この出だしが抜群にいい。あの空と、あの風景。あの色と構図。あのカメラの動きと間。そしてあの音楽。すべてが完璧。だから僕は始めの1分で彼の才能にマイってしまった。そして「これは大変なことになる」と緊張が体中を走った。それから終映までの2時間以上の間、1秒も緊張が緩むことは無かった。念のため言っておくけれど、それは眉間にしわを寄せていた、という意味じゃない。ちゃんと笑う場面が沢山用意されている。言い換えれば集中が途切れなかったということ。

 キャスティングがまたズバリ。ソン・ガンホって、蛭子さんみたいだなぁ、なんて思ってたが最高の演技をしてくれている。その他の出演者も本当に的確なキャスティングと演出で、唸るしかない。
 そして僕がすごいと思ったのは、監督の色に対するこだわり。特に空の描写は素晴らしい。もう僕が、「この場面はこの色だよな」という、まさにその色を出してくれる。シチュエーションと完全に一致した描写には鳥肌が立つくらい。本当にずば抜けたセンスだ。

 と、ほめまくっているだけでここまで来てしまったんだが、ここから時代背景やらストーリーやら各登場人物やら名珍場面の肝など説明していたら大変だし、する必要もない。とにかく一言、絶対に損じゃないから見たほうがいい。レンタル代が惜しかったら僕がおごってもいいから観て! これだけいって終わりにする。
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by redhills | 2004-12-18 05:16 | 映画
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赤坂日記・・・赤坂在住の"Akasakan" リトルが、東京のへそで日々の思いを綴る。
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