"the Akasakan diary"    ~リトル君の赤坂日記

●復讐3部作

 さて、もう一方の「オールド・ボーイ」である。

 前から観たいと思っていた。何しろカンヌでタランティーのが狂喜してグランプリあげちゃった作品だからいつか新文芸坐でやるだろうと待っていた。

 この作品はパク・チャヌク監督の復讐3部作の2作目に当たる。パク監督は「JSA」で有名だが僕は見ていないので何ともいえない。ところがちょうどタイミングがいいことに先月渋谷で復讐3部作の1作目である「復讐者に憐れみを」をやるというので、それっとばかりに観にいった。「オールド・ボーイ」の前に観ておきたかったし、韓国女優の中でムン・ソリと並ぶ僕のイチ押しであるペ・ドゥナと、「殺人の追憶」のソン・ガンホの共演というのは十分にソソられた。というわけで、ここで一挙2作品について感想を書いてみよう(ちなみに第3作「親切なグムジャさん」は、あの「韓国の吉永小百合」(と僕が勝手に言っている)「チャングムの誓い」のイ・ヨンエ主演で近々公開予定)。

 結論から言うと、僕はこの監督を余り評価しない。過大評価されていると思う。とても良いところももちろんあるのだが、復讐劇というものの作り方に重大な間違いがあるように思えてならない。盛り上げるためだけに作ったシーンが鼻につく。どぎつい色の釣り針で観客の感情を強引に釣りあげようという意図が丸見えなのだ。

 「復讐者に~」では、殺された我が子の司法解剖の現場になぜ父親が立ち会わなければならないのか、まったく理解できない。父親の復讐心を掻き立てさせたいのだろうが、普通そんなもの立ち会うわけないだろう。不自然すぎる。その他にも棺おけが焼かれるシーンなど、目新しさを感じさせたいのだろうが何の面白さも無い。大体にして表現が下品だ。ま、韓国映画の特徴の1つはこの表現のどぎつさ、下品さでもあるのだが(いつも韓国映画を見るたびに隣国でどうしてこうも感覚が違うのだろうかという思いに駆られる)。また、真上から撮るのがこの監督のトレードマークのようだが、これもあまりよくわからない。構図の美しさは感じるが。ドゥナちゃんは良くも悪くもいつものドゥナちゃんだし、ガンホさんも鋭い眼光が良かったんだけどもね。何か監督の取り上げたい復讐心という情念がガソリンぶっかけられて景気よく燃え上がってるみたいで、そこに燃え盛っている炎に本当の熱さが感じられない。共感できなかった。

 「オールド・ボーイ」は復讐劇であるばかりでなくサスペンスでもあるのだが、パク監督はここでも復讐劇の作り込みに失敗している。通常サスペンスはもちろんトリックが一番大切なのだが、この作品の場合、そこに復讐という、尋常ならざる感情的かつ超法規的な行動を絡ませるのだから、何より大切なのは状況よりも復讐者の描写だろう。なぜそこまでやるのか、やらざるを得なかったのか、その復讐劇が凄惨であればあるほど、そこに十分な説得感が無ければ観る者は感情移入できない。ところがこの映画はそれが全く足りない。それでも楽しい、面白い、と感じる人は、僕には残酷描写が見たいだけの単なるサディスト(またはマゾヒスト)もしくは、二転三転するのがわかっているストーリーを、こじつけでも良いからいつひっくり返されるのかと楽しむために映画を観ているサスペンスオタクのようにしか思えない。

 問題は主人公よりも敵役にある。なぜ主人公は15年も監禁されたのかについての説明はあるが、まったく悪意の無い彼をそこまで憎み続ける敵役は単なる異常者にしか見えない。映画で一番楽なストーリーは、とんでもない人がとんでもないことを仕出かすというものだ。そんなことするわけないと言われても、いえこの人はそんな人なんです、と言ってしまう。それを避ける方法はただ1つ、その人がどういう人間であるかをきちんと示し納得させるしかない。でもこの映画は、彼がどういう人間かさっぱりわからない、不幸な過去によって抱え込んでいる悲しみはわかるものの、なぜそれが主人公への憎しみの一点に凝縮するのか説明不足。ただただ不気味な感じで(それがサスペンスタッチに貢献しているのは事実だが)、しかも何故かチョー大金持ちらしいのが笑える(そもそもそんなにビジネスで大成功してるなら忙しくて復讐なんてしてる暇ないだろ)。もちろん最初からコメディーで撮るなら全然良いのだが、大真面目な人間ドラマにしているので、粗い作りがキズとなって目立つ(ちなみに全く関係ないが、岡本喜八監督のサスペンスコメディーは素晴らしい! 特に「殺人狂時代」は傑作だ)。

 こういう映画(原作は日本のマンガだが)では、人物描写などは二の次で、まず、ある日何の理由も知らされないまま拉致され15年も監禁されたらどうなるだろうかという状況設定が先にあるので合理的な説明などは後回しになりがちだ。それを納得させるのがストーリーテリングの妙なのだが、そこに失敗している。だから復讐劇として画竜点睛を欠いている印象を拭えないのだ。

 サスペンスの肝であるトリックについても不満だ。まず催眠術を都合良く使い過ぎ。あれだったら何だって出来る。それはそれで楽しんじゃえばいいのかも、とは思うけど、それを明るく楽しんじゃえ、というような作りにしてないのでどうしても引っかかる。あと、やや難癖に近いが、ヒロインと主人公との関係にしても、途中で反対の情報を与えておいてひっくり返すというのは鼻白む。気付くでしょ、いくら何だって。あ、ひょっとしてそれも催眠術?

 と、散々けなした上で言うのも何ですが、いいところもあります。画に力があるというのは間違いない。題材のエグさに負けない腕力の強さでグイグイ引っ張る。構図は見るべきものがあるし、音楽も良い。肝心のバイオレンス描写もけっこうイケてて、特にハイライトの長回しのシーンは楽しめる。こういったバイオレンスシーンがタランティーノのツボにハマッタんだろうな、やっぱり。ただし、イタさでは「殺し屋1」(三池崇監督)に負けてる。

 最後に俳優について。主演のチェ・ミンシクは素晴らしいと思う。僕は「シュリ」の北朝鮮特殊工作員役しか見てなかった。彼とソン・ガンホ、ソル・ギョングが韓国の3大俳優だそうだがそれも納得。理不尽な運命を生きる男を熱演している。それにしても韓国人俳優って極端で思い切りのいい演技をするなぁ。日本にもあんな演技の出来る俳優がいればな・・・。やはりジャ○ーズがガンだな。
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by redhills | 2005-05-31 14:24 | 映画
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赤坂日記・・・赤坂在住の"Akasakan" リトルが、東京のへそで日々の思いを綴る。
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