●郵政解散=郵政選挙?
解散から2週間経ち、公示まであと8日となった。来週の火曜日には選挙に入っているのかと思うとあっという間という気もするが、9月11日まではまだまだ長いな、という気もする。
さて、先週末のホリエモン出馬でほぼ刺客はタマが出揃った。小泉劇場のシナリオとしてはまあ、ほぼ満足の行くパフォーマンスであっただろう。確かにホリエモンが社長を辞めることを拒否したために無所属での出馬となったことは想定外だったが、実はこれとて、亀井潰しに有力候補者が欲しかった小泉と、当落は問題ではなく3週間限定で金をかけずにマスコミの耳目を集めて売名したいホリエモンとの間で明確な利害の一致があり、実質的には不都合は無い。まあ、最後の最後に弱肉強食の権化のような候補が登場したことで、小泉政権の地金がチラリと見えた、と感じた人も多いだろう。刺客の質は総じてあまり上等とは言えない。選挙に強い弱いとか経歴の良し悪しとかいう意味ではなく、国政を目指す人物としての人品骨柄という意味で、である。国会議員の議席が目の前にぶらさがると、いろんな人たちが群がってくる。権力の魔力は今も昔も変わらないらしい。そういう意味で面白い見世物ではあった。 いよいよ党首遊説もスタートし選挙戦は実質的なスタートを切ったわけだが、相変わらず小泉総理は郵政民営化一本槍である。「この選挙は郵政民営化ができるのか否かを問う選挙だ」「郵政民営化ができなくて他の改革ができるのか」と絶叫し、民営化法案に反対したものはすべて守旧派と決め付けている。対する岡田代表は、総選挙とは政権を選ぶ選挙であり、郵政の一点のみで決めるものではない、という主張である。まともではあるが、まったくインパクトに欠ける。見た目の勢いの差はやはり歴然とある。 それを反映してか、週末に発表された世論調査は解散直後に比べて小泉政権の支持率、自民党の支持率、ともに上昇した。これはやはり、ここ2週間の小泉劇場がもたらした効果であろうと思う。だが、僕が思うにおそらく支持率は今が頂点だろう。これから徐々に数字は下がって行くと思う。 なぜそう言えるのか。予兆は日曜日のテレビにあった。 昨日のテレビの政治討論番組は各党の政策責任者が会しての討論だった。それを可能にしたのは、先週出揃った各党のマニフェスト(政権政策)の存在である。マニフェストとは「私達が政権を取ったらこういう政策を行います」と、政党が選挙の際に予め明文化したものである。「公約」との違いは実は明確で、マニフェストには「具体的」な「数値目標」や「達成期限」や「財源」が盛り込まれていなければならない。そういった記述の無いものは「ウィッシュリスト」と呼ばれ、単なる耳障りのいい言葉の羅列と見なされ、政治的価値の無いものであるとされる。 さて、テレビを見ていて印象的だったのは次の2点だった。 1点目は、自民党の主張が精神論に非常に片寄っていた、ということ。与謝野馨政調会長といえば、自民党でも理論派で鳴らした論客であるはずなのだが、のっけから「郵政民営化への取組みに我が党の改革への強い意志が表れている」と、あのクールな与謝野氏が、と耳を疑うようなコメントの連発であった。とにかく、理屈抜きで郵政民営化こそが改革の中心であり、そこを突破することでしか改革は成し遂げられないという抽象論に終始していた。肝心の郵政民営化の具体論については全く聞かれなかった。 2点目は、自民党のうろたえぶりである。まずは年金。司会者から、自民党は国民年金をどうするつもりかと問われると、なんと与謝野氏はいきなり「民主党は年金の一元化というが、年金審議調査会で数字を出せといっても出してこなかった」と、自民党の政策は言わずに民主党批判を展開したのである。改めて司会者に国民年金についての考えを聞かれると「いろいろと難しい」と黙ってしまった。続いて財政再建の話になり自民党の政策を聞かれると、またしても「民主党のは数字のバラマキだ」と、民主党批判を行った。そして自らは抜本的財政構造改革を行うという、まったく具体性の無い「公約」を述べていた。 ここに自民党の今回の選挙に対する姿勢が象徴されていた。どういうことかというと、今回の選挙、自民党は冗談で無く、本当に郵政一点での突破を目指しているのである。他の政策はまったく具体性を欠き、到底政権党の責任あるものとはいえない、全く練れてない抽象論の羅列なのである。自民党のマニフェストは実は典型的なウィッシュリストでしかないのだ。 一つの資料がある。自民党と民主党のマニフェストを比較したものであるが、両者の差は歴然としている。いくつか挙げてみる。 (年金)…民主は「年金を一元化し、社会保険庁は廃止」としているのに対し、自民は「サラリーマンの年金制度の一元化推進」「社会保険庁は事実上廃止」と書いている。今一番問題になっている国民年金についての記述が無いし、「事実上」の廃止とはどういうことなのか、さっぱりわからない。 (財政再現)…民主は「3年間で10兆円の歳出削減」「公共事業を半分に」「国家公務員の人件費を2割カット」と具体的なのに対し、自民は歳出削減についての記述は無く、「公務員総人件費を大幅に削減」と、やはり数値目標も達成期限も明記されていない。 財政再建を語る際に避けられない税制については、自民党は一層ひどく2枚舌を使っている。いわく、「『サラリーマン増税』をおこなうとの政府税調の考え方は取らない」という。政府税調の責任者は小泉総理のはずだが、自民党は選挙では政府と違う主張をするというのだろうか。 僕が、これから自民党や小泉総理の支持率が落ちてくる、と考えるのは、マスコミや有権者の関心が、段々と郵政一点から、政策全般へと向かってくると思うからだ。そうなれば、自民党のマニフェストが年金や財政再建についていかにいい加減なものであるか、唯一の売りである郵政民営化についてすら、穴だらけであるということが分かってくる、少なくともまともな政策論争となったら、すきだらけであることが明らかになってくると思うからだ。 小泉総理は8月8日夜の会見で「これは郵政解散だ」と述べた。これは正しい。解散権を持つ総理が郵政民営化法案が否決されたから解散したのだから、権限を持つ総理が郵政解散だと言えば、そうだろう。 しかしだ。では今回の選挙は「郵政選挙」なのだろうか。小泉総理はそう叫んでいる。だが、これは正しくない。なぜか。それは、解散するか否かは総理が決めるが、投票するのは有権者であり、総理大臣に選挙の争点を決める権限はないからだ。「郵政選挙」にしたいという総理の気持ちはよくわかる。しかし、おそらくそうはならないだろう。小泉劇場に見入っていた有権者はある時点でハタと立ち止まるだろう。今回の選挙で自分は一体何を政治にして欲しいのだろうか、と。 あとは時間との勝負となる。感情に訴える小泉劇場の伝染力は強力だったが、政策論争はなかなかストレートには伝わりにくく、またいったん勢いのついた世論の流れは急には押し返せない。だが、民主党はそれに賭けるしかない。有権者を信じる、その思いだけを胸に逆風の中を進むしかない。
by redhills
| 2005-08-22 22:09
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