●予シュー復シューその2 予シュー編
では続いて、今後の展望へ。
●まず準々決勝ですが、いきなり大注目のドイツとアルゼンチンの決戦です。 前評判は高くなかったドイツですが、開幕戦に快勝して流れをつかみ、ポーランドに苦しみながらも劇的な勝利を手にしたことで国民的な支持も得、3戦目でクローゼ、ポドルスキの両FWが絶好調となるに及んで、一気に優勝候補へと変貌しました。開催国の強みもあり、勢いは8チームの中でダントツです。アルゼンチンの壁を破ればほぼ間違いなく、決勝へと駒を進めるでしょう。若いチームでもあり、試合を経るごとに成長を見せていることも好材料です。 ですが、私は現時点での両チームの優劣はほぼ互角だと思っています。チームとしての完成度、戦術の優劣、控えも含めた個人の技能、経験などを勘案すれば、実力は明らかにアルゼンチンの方が上です。今はそれを、ドイツチーム内部のものすごい勢いと、開催国のメリットが埋めているわけです。第3国で試合をしたら間違いなくアルゼンチンが勝つでしょう。ですが、そういう仮定は無意味です。今晩の試合がどうなるのかが問題です。 忘れてはいけない重要なことがあります。今大会、ドイツは4試合中3試合で、試合開始すぐに先制している、ということです。ホームチームの利をフルに活かしていち早く得点して優位に立ち、相手を追い詰める。エクアドル戦でも書きましたが、このチームは先制するとすごく勢いが出ます。逆に、それが出来なかったポーランド戦は大苦戦しました。それともう一つ、スペインを見ていても分かるとおり、まだ本当の強豪国(ディフェンスが強い国)と対戦していない以上、その攻撃力が優勝できるほどのものであるかは疑問なのです。つまり、試合が始まってから10分の間に得点できなかった場合、ドイツは一気に劣勢に立たされる可能性が非常に高いのです。 以上のことから考えて、アルゼンチンはまず、決して攻撃に人数を割かずに全力で守りを固めてくると予想します。そして、逆にドイツは、あのサポーターの凄まじい声の後押しを背に、怒涛のように攻め込んで点を取りに来るに違いありません。この10分間の攻防が試合を大きく左右すると思います。 私は、アルゼンチンには、ドイツの猛攻を凌ぐ力は十分にあると思っています。2人のFWは、アジャラとエインセを突破できないと思います。そして彼らへパスを供給するバラックは、マスチェラーノがガッチリとマークするでしょう。90分間はともかく、最初の10分は絶対に目を離すな、とペケルマンが明確な指示を出せば、彼ら3人を抑えることはそう難しいとは思えません。スタジアムの歓声も、幾多の経験を積んでいるアルゼンチンの選手たちには然程のストレスにはならないでしょう(ブラジルでの南米予選を想像してみてください)。 もし、前半10分間無得点でゲームが進んだ場合、アルゼンチンの勝機はグッと増します。序盤の入りを慎重にこなした後、彼らは徐々に攻勢に出てくるでしょう。中盤とボールはアルゼンチンが支配することでしょう。ドイツのディフェンスの成否は次の一点、リケルメをボランチのフリングスが抑えられるかにかかっています。ですが、1人のマークで彼を完全に抑えることはおそらく不可能でしょう。加えてドイツのセンターバックは、クレスポとサヴィオラの巧さとスピードに対抗できないでしょう。たとえ抑えることができたとしても、後半投入されるであろう、テヴェスとメッシのスピードについていける敏捷性はありません。ファウルが急増し、最悪PK、でなくても、危険地域でのセットプレーからの失点の確率は高いと見ます。とにかく最初の10分、ここに注目です。私は、この一戦に勝った方が優勝すると思います。 ●続いて、イタリアとウクライナ。 こちらは余程の番狂わせが無い限り、イタリアが勝つでしょう。いくらシェバといえども、1人でイタリアの堅守は破れません。もう1人のFWであるボロニンが負傷欠場というのも痛い。イタリアは、裁判が始まったカルチョスキャンダルや、元代表選手の自殺未遂事件など内的に深刻な問題を抱えており、それがどう影響を与えるのか予断を許しません。ですので、勝ったとしても、準決勝ではドイツ、アルゼンチンどちらと戦っても敗退すると思います。 ●次は、イングランド対ポルトガルです。 デコさえいれば、ポルトガルの勝率は80%を超えていたでしょう。しかし、彼は累積警告で出場停止です。デコがいないことで、勝敗の行方は五分五分と見ます。攻守の要のいないポルトガルがどう戦うのか。名将、フェリペ・スコラリの腕の見せ所でしょう。イングランドは今までの4試合、攻撃にまったくいいところがありません。ベッカムの個人技と堅守で勝ち上がってきた状態です。ポルトガルに勝つには、未だ万全の状態でないルーニーのゴールが必要です。ポルトガルは、フィーゴがゲームメイクをするらしいですが、オランダ戦で負傷退場したクリスチアーノ・ロナウドがどの程度のコンディションで試合に出れるのかで、攻撃の鋭さがまるで変わってくるでしょう。以上、両チームとも不確定要素の多い一戦で勝敗の予想は難しいです。 ●最後はブラジル対フランスの新旧王者対決です。 この一戦も大変に注目です。何せ、フランス大会決勝の再現であり、ジダンの引退試合になるかもしれないからです。 決勝トーナメントに入って、ようやくエンジンがかかってきたセレソン。ですが、まだまだ見せているのはその実力の6、7割程度。決勝にピークを合わせようという、小憎らしいまでの勝ち上がりぶりは、真の王者にふさわしい。こういう余裕のある戦いが出来るのも、いつになく充実している後方の6人と1人によるところが大きいです。史上最強の呼び声は、4人の魔法使い故ではないのです。これでロナウジーニョが本気を出したらどうなるのでしょう。見てみたいような、見たくないような。次元の違うサッカーが展開されることでしょう。 問題はむしろ、フランスがどう戦うか、にあるでしょう。スペイン戦でのジダンの復活は本当に感動的でしたが、2試合続けてあのようなパフォーマンスができるのかは分かりません。彼の中で最後の炎が燃え尽きたときが、フランスの負ける時でしょう。ですが彼のコメントを聞く限りでは、まだその時ではないように思います。 フランスの戦い方はおそらくこうなるのではないでしょうか。いかなフランスといえど、テクニックでブラジルを凌駕することは想定しにくい。ですから、ロナウドとアドリアーノの飛び出しを警戒してラインを上げず、ある程度中盤のプレスを弱くしてブラジルにボールを持たせてからのカウンターサッカーを目指すのではないでしょうか。中盤でブラジルが手詰まりになった瞬間、ビエラとマケレレがカカやロナウジーニョからボールを奪取し、ジダンへパス。その脇をリベリーとマルーダが攻め上がる。そして、彼が一瞬きらめきでゼ・ロベルトとエメルソンの防御網を切り裂くパスを前線のアンリに出せたとき、フランスに勝機が生まれます。少ない勝機をフランスが活かせるかどうか。大活躍をしてきたボランチの2人がどこまで頑張れるか。先制できればブラジルは大いに苦戦することでしょう。そしてそのとき、本当のセレソンが姿を現すことでしょう。 準決勝のもう一戦は、イングランドが勝ちあがれば、ブラジル、フランスどちらでも勝った方が決勝へと進むでしょう。ポルトガルが勝ちあがってきた場合は、ものすごい名勝負になると思います。ブラジルとポルトガルはほぼ互角、やや落ちてフランスの順に可能性があると思います。 ●優勝は? ずばり、対戦カードは、アルゼンチン対ブラジルと予想します(希望もかなり含まれてますが)。主力選手の負傷や出場停止がないという仮定の上ですが、両チームはほぼ互角ではないでしょうか。今大会での試合振りからすればアルゼンチンに微かに分がありそうですが、100%のブラジルを抑えられるのかはやってみなければ分かりません。それに、あと3試合をベストコンディションで通すことも難しいでしょう。ディフェンスでベストメンバーが組めない事態となれば、やはりブラジルは強いでしょう。しかし、世界で唯一、ブラジルに対抗できる地力を持つ国であると自負し、ブラジルが相手となると実力以上の力を発揮するのがアルゼンチンです。大熱戦になること間違いなしでしょう。 もしアルゼンチン対ブラジルの決勝戦となれば、1958年のスウェーデン大会以来の、ヨーロッパ大会での南米チームの優勝となると同時に、今までなぜ無かったのかが7不思議とされていた、ワールドカップでの両国の対戦が史上初めて実現することとなるのです。これを夢の対決と言わずして何というのでしょう。ポルトガル対アルゼンチンも見てみたいですが、やはりその魅力にはかないません。 いずれにせよ、これからの試合はすべて、見逃すことの絶対できないものになることは間違いありません。今からとても楽しみです。
by redhills
| 2006-06-30 15:29
| サッカー
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