"the Akasakan diary"    ~リトル君の赤坂日記

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●先進国と後進国(W杯4日目)

 後進国という言葉は差別的だということで使われなくなったが、あえてそう言いたい。

 日本の戦いぶりを見て、そしてその直後に、チェコ対アメリカ、イタリア対ガーナの試合を見て、この言葉が頭に浮かんだ。それくらいに悪い負け方だった。

 多くの人は、ジーコ監督の用兵(特に柳沢→小野の交代)に疑問を投げかけていたけれど、自分は、最大の問題はオフェンス、特に2人のフォワードの積極性と決定力の欠如、そしてサイド攻撃におけるクロスの精度にあったと思う。守るためには攻めが利いていなければ駄目なのだ。
 1点を取りに来たオーストラリアの裏を突いて、何度決定的チャンスがあったことか。「撃て!」という場面で、ことごとくドリブルやパスという消極的な選択をし、相手につめられてからの弱々しいシュートしか放てないフォワード。何度と無くサイド深くでフリーになりながら、見当違いのところにボールを蹴り上げてしまうウインガー。後半あれだけチャンスがありながら、惜しいシュートが1本も無かったとは信じがたい。2点目をしっかり奪っておけば、負けることはなかった。1点取られても同点にされることは無かったろう(小野でなく、遠藤もしくは稲本を投入していれば、だが)。日本はまだまだサッカーにおける勝ち方を知らないのだ。

 ではサッカーを知っている国はどういう戦いをするのか。その答えを僕はすぐ見せてもらった。チェコ。FIFAランキング2位の強国。とにかく、チームの熟成度が段違いの、大人のチーム。名将ブルックナーの意思が隅々にまで浸透している。開始5分のコラーによる得点は、中盤でボールを奪ってからの右サイドへの1本のパス、そして正確なクロスが生み出した。そして、前半終わり近くでの、トップ下のロシツキーによる絵に描いたようなミドルシュートによる中押し、そして後半、攻勢に出た相手の裏を突いたダメ押しの3点目。
 アメリカもFIFAランキング5位の強国。ブルース監督の戦術を完璧に体現しており、決して弱いチームではないのだが、結果は0-3の敗戦だった。では何がこの結果をもたらしたのか。一言で言ってしまえば、チェコは一人ひとりの選手がその状況状況に応じて何をするべきかを知っており、それを高度なレベルで実践できる、ということに尽きる。これは、口で教えてできることではない。彼らは肌でサッカーを知っているのだ。いや本当にチェコは強い。見ていて楽しい。ぜひ勝ち進んで欲しい。

 続いてのイタリアの戦いぶりは、なお一層、そのサッカーの質の、次元の違いを印象付けた。アフリカ最強の呼び声高いガーナ相手に、役者の違いを見せつけたのだ。とにかく、チームの戦術が徹底している。ピルロのパスから、トッティ、トニ、ジラルディーノの3人でシンプルにゴールへ迫る。ガーナの強力な攻撃は中盤の早めのチェックでつぶし、それでも進入してきた場合は、ネスタ、カンナバーロの2人が体を張って防ぐ。とにかくこの2人のディフェンス力は尋常ではない。フィジカルやスピードでは負けていても、飛び込むタイミングや体の寄せ方などのテクニックが素晴らしい。本物のディフェンスが見れた。
 特に、前半終了5分前に1点先制してからの試合内容が抜群。しっかり守って、相手が攻め手を増やせば、すばやく封じ手を打ってくる。途中で2度、3度とフォーメーションを変更しても、選手がそれを理解して、相手の攻撃を防いでしまう。そして、中盤の圧力から相手ディフェンダーのミスを誘い、後半38分に決定的な2点目を奪う。

 ゲームの流れに応じた戦術の理解とプレー選択、正確なクロスボール、枠に飛ぶミドルシュート、決定的な仕事をするフォワード…。そのうちの1つでも日本にあったら…。

 すみません。今はクロアチア戦に向けてどうすればいいかは考え付きません。とにかく、まだ終わったわけじゃない、とだけしか言えません。
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by redhills | 2006-06-13 16:28 | サッカー

●初戦の前に(W杯3日目)

さあ、いよいよ今晩はオーストラリアとの対決です。
ささやかながら、自分も気合を入れてジーコジャパンを応援しようと思います。

結論から言えば、まず負けることは無いと思う。
今までの試合を見ていても、ラフプレイに対するファウルは厳しくとっているようなので、体をぶつけてボールを奪いにくるオーストラリアのタックルに対しては、怪我に気をつければすべて日本ボールとなるだろう。落ち着いてボールをまわせば、彼らはついていけないだろう。それと、この暑さ。条件は同じだが、消耗の度合いはボールを回される(追いかける)相手の方が断然大きいだろうし、スタミナもこちらのほうがあると思う。時間が過ぎれば過ぎるほど、動きの差は出てくるだろう。
メンタル面でも、試合が近づくにつれてプレッシャーがかかってくるのは、オーストラリアのほうが大きいだろう。出だしに日本が仕掛けて2、3決定機を作り出せれば、一気に追い込めると思う。
日本としては、一発狙いのプレー(ハイボールの放り込みとか)にケアして、CFヴィドゥカへのパスを厳しくチェックすれば危険度は大きく下がる。キューウェルのサイド攻撃は気になるが、怪我からの回復は100%ではあるまい。実戦も遠ざかっている。出てきても大きな脅威にはならないと思う。

落ち着いて、練習し、イメージしてきたプレーをすれば、必ず勝てる。
ずばり、スコアは2-0もしくは3-1と予想。

●3日目
 オランダ 1-0 セルビア・モンテネグロ
 
 オレンジ軍団登場。どうもピッチはすごい暑さらしい。午後3時からの試合はどの国も難儀だろう。評判の攻撃力はまだまだ不発だったけれど、アリエン・ロッベンが大暴れ。1人でかき回してた。あんまり彼が活躍すると、来期のCLが心配なんだよな(彼はチェルシー所属)。でも、メッシと違って、スタメンで使われて良かったね、ロッベン。

 メキシコ 3-1 イラン

 正直、イランのサッカーは好きだ。アジアの好敵手で、イランとはいつ試合しても面白いゲームになる。今回はドイツで活躍する選手も多く、旋風を起こして日本と一緒にグループリーグを突破できたらいいなあ、と思っていたんだけど。同点に追いつくところまではすごくいい試合だったのに、後半10分で突き放された。中継でも言われていた、センターバックの穴が続けてミスを呼んでしまった。メキシコはさすが評判どおりの強さ。僕はベスト8にはいくと思う。国歌斉唱のときのメキシコイレブン、超かっこよかった!あと、マルケス、すばらしいキャプテンシーでした!

 ポルトガル 1-0 アンゴラ

 なぞの国アンゴラが、旧宗主国(しかも優勝候補)といきなり緒戦に当るという、ちょっとかわいそうな対戦。でも、ポルトガルは、何とデコが欠場!大丈夫か?いや、勝敗じゃなくて、デコがね。思ったよりもアンゴラは善戦したけど、やっぱりきっちりポルトガルが勝ちました。これがW杯の壁なんですよ。フランス大会での日本のアルゼンチンとの初陣を思い出しました。たったの1点なんだけど、この1点が遠いんだよねえ…。残り2試合もアンゴラ、がんばって。

 昨日書いたコートジボワールのユニフォームの話だけど、どうも現地でも人気らしい。そうだろう、そうだろう。でも、今日の試合で見たイランとアンゴラのユニフォームも小文字だった。つまり、プーマのユニフォームはすべてそうだということだな、これは。でも、プーマ軍団、3戦3敗(涙)。がんばろう、プーマ軍団!

お、もう試合開始まで15分切った。
試合レポートは後ほど。
それでは!
さあ、気を送るぞ~~~
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by redhills | 2006-06-12 21:43 | サッカー

●小文字はかっこいい!! (W杯初日&第2日)

さて、最近すっかりサッカーブログと化している赤坂日記。
サッカーに興味の無い方々をさぞかしうんざりさせていないかとかなり心配ですが
すみません、まだまだ止まりません(汗)。
というか、これからが本番。
そう、いよいよ始まったドイツワールドカップ。

赤坂日記的にはNHKさまに深く感謝しつつ、全試合視聴&定時レポートを決行するつもり。
そういうことで初日と2日目をレポート。

●初日
 ドイツ 4-2 コスタリカ

 仕上がりにかなり?がついていたドイツが何と4点もとってしまった。応援の後押しももちろんあったと思うけど、バラック欠場でここまでやるとは予想外。何といっても開始早々のスーパーゴールがすべてを変えたなあ。あれでチームがすごく楽になった。
 4点目のこれまた超ロングミドルシュートを見て、やっぱり今大会は採用された新しいボールがかなり影響を及ぼすと予想。日本メーカーが開発したもので、初めて縫い目を無くし、より完全な球体に近づいたということだけど、ボールが揺れるらしく、キーパーはまなりキャッチしづらいらしい。ドカン、というハードシュートを得意とするプレーヤーがゴールを量産すると思う。ロベカルとか、ガンガン撃ってくるんじゃないかなあ。ロナウジーニョや俊介なんかの技巧派にはあんまり嬉しくないボールなんじゃないだろうか。

 ポーランド 0-2 エクアドル

 ポーランドが完敗した。ホーム同然のドイツでメンバーもそろい、組み合わせも良く期待していたのに、ゲームを見てがっくり。とにかく動きがダメ。人もボールもまったく動かないのでまったくゴールの予感がしない。逆にエクアドル。南米予選では高地という立地を生かし、圧倒的にホームゲームに勝って勝ち抜いた、超内弁慶チーム。だからアウェイ、しかもヨーロッパの試合はダメだろうな、と思っていたら、どうしてどうして、南米らしいしたたかなゲーム運びで勝ってしまった。これだからサッカーはやって見なけりゃわからない。

●2日目
 イングランド 1-0 パラグアイ

 今大会のイングランドは久しぶりに役者が揃っている。ルーニーが戻ってくれば攻撃力は十分。そして何といっても注目はランパードとジェラードのダブルボランチ。夢の組み合わせだ。40年ぶりの優勝も夢ではない。自分もかなり期待しているのだが、難敵パラグアイを何とか退けた。
 正直、ラッキーポイントに近い開始早々のオウンゴール以外は目立った攻撃が見られず、試合の流れはパラグアイのものだったと思うが、各プレイヤーの豊富な経験が生きて凌ぎきったという感じ。まあ、チームもトップコンディションじゃないし、とにかく勝ち点3と取ったのが大きいでしょうな。パラグアイは序盤に続いたキャプテンのミスによる失点&キーパーの負傷退場という、予想外のパニック状態をよく耐えた。それにしても、ドイツのレーマンの負傷といい、ボールの件といい、今大会はキーパー受難の大会の予感がする。

 トリニダード・トバゴ 0-0 スウェーデン

 イングランドと共にグループリーグ突破が有力な北欧の強国スウェーデン。イブラヒモビッチ、ラーション、リュングベリのフォワード陣は他国に引けを取らない。片や相手は初出場のトリニダード・トバゴ。一方的な試合になると思われたけど、結果は意外なものだった。
 とにかく、トリニダード・トバゴの、初陣らしいけれん味のない戦いぶりが素晴らしい。臆せずに強豪に堂々と渡り合い、攻守に全力プレーをした。後半早々に1人退場して10人となってからはキーパーを中心に何度もピンチを防ぎ、最後まで集中力を切らさなかった。勝利に値する引き分けだったと思う。まるで優勝したかのように喜ぶトリニダード・トバゴと、まるで負けたかのように沈み込むスウェーデンがゲーム内容を表現していた。本当に好感のもてるいいチームだ。

 アルゼンチン 2-1 コートジボワール

 さあ、そして死のグループ、いきなりの豪華カード。アルゼンチンとコートジボワールの激突という大注目の好カード。予想通り見所の多い一戦だったけど、前回衝撃の1次リーグ敗退に終わったアルゼンチンの執念が上回った、という感じだった。
 リケルメ、クレスポ、サヴィオラの攻撃陣が設計通りに機能した。リケルメ、好調を維持している。かなりやるな、と期待は大きくなったけど、次戦以降はもっとマークがきつくなるだろう。でも、目を見張ったのはアルゼンチンディフェンダーの能力の高さ!アフリカ勢の驚異的な攻撃を抑え込んだ。さすがに、ブラジルに対抗できる唯一のチームだと、その強さを再認識した。


●2日間を通じて一番印象に残ったコト
  →コートジボワールのユニフォームのかっこ良さ!!

オレンジも鮮やかだけど、何より背中の選手の名前がアルファベットの小文字なんですよ!!
これがすっげーおされ!!
もう、センス抜群!!
これデザインした人はエライよ!!
久しぶりに、ユニフォームでヒットした(その前は2002年のイングランドのやつ)。

とにかく、あの小文字はいいよ!!

あー、欲しいなあ、あのユニフォーム…。
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by redhills | 2006-06-11 21:51 | サッカー

●バルサの冒険・最終章 「約束の地」~vsアーセナル(4)

<魔法の5分間>
 70分、不安定なオレゲルに代わってベレッチが入る。アンリやリュングベリの突破への対処だが、アンリも腰に手を当て、しゃがみこんで息をしている。さすがの彼も限界が近い。この頃から、後半から降り始めていた雨が激しくなってくる。レーマンが退場してから1時間が経ち、ライカールトの策がついに実を結ぶ

 76分、左サイドでジオから前方のエトオにパス。すかさずエブウェがピタリと付く。突破できずにエトオがイニエスタにボールを戻す。そのとき、ゴール前でラーションが手を挙げて動き出す。トゥレが体を寄せる。ラーションの足元にイニエスタから絶妙のスルーパスが送られる。ラーションの動きと同時にエトオが走り出す。一瞬エブウェのスタートが遅れる。ここでラーションが素晴らしい仕事をする。トゥレを背中で牽制しながら、ボールに触れるか触れないか、という微妙なタッチで、イニエスタのパスの勢いと方向を「少しだけ」変える。それをトップスピードのエトオがワントラップから蹴りこんだ。エトオ1人では破れなかった左サイドが、ラーションの助けによりついに破られた。胸を叩いて吼えるエトオ。あの冷静なライカールトが飛び上がって喜んでいる。ついに、ついに、同点に追いついた!

 雨が一層激しさを増しピッチが霞がかってくる中、バルサの怒涛の攻撃が続く。そして、またしても、ラーションが仕事をする
 80分、右サイドを攻め上がったベレッチがラーションにパス。サイド奥へと流れたラーションが中へパス。コールの足をかすめたボールは、猛然と走りこんできたベレッチの足元に。そのままドリブルで持ち込んだ彼が振りぬいた右足から放たれたボールは、キーパーの股間を通過し、ゴールへと吸い込まれた。

 決勝ゴール!!両手で顔を覆いひざまずくベレッチ。そこに押し寄せる赤と青のユニフォーム。エトオが泣いている。いや、雨が顔を打っているのか判然としない。

 ここに驚くべき事実がある。ベレッチにとって、これが「バルセロナでの初ゴール」なのだった。シシーニョに破れてブラジル代表から漏れた彼に、神が微笑んだ瞬間だった。
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<歓喜>
 3枚目のカードを切るタイミングを逸したヴェンゲルは慌ててレジェスを投入するが、すでに手遅れだった。タイムアップ。劇的な逆転勝利。歓喜のなか、2005-2006シーズンのバルサの冒険は終わりを告げた。数々の激闘の末、ついに我がバルサは、「約束の地」、ヨーロッパの頂点に立ったのだった。

 試合後の優勝セレモニー。バルサの選手達が一人ひとり、壇上へと上がる。みんなニコニコだ。最後にキャプテンのプジョルの手にビッグイヤーが渡る。満面の笑みでビッグイヤーを頭上高々と掲げるプジョル。そのとき、赤と青の紙吹雪が舞い、スタッド・ドゥ・フランスの興奮は最高潮に達した。

 それにしても、この偶然の妙は何だろう。得点したエトオとベレッチはドイツへ行けない。その思いがゴールに繋がったのだろうか。そして、ラーション。これが彼にとってバルサでのラストゲームであった。
 2年前、一度は引退を考えていたところを、バルサからのオファーに考え直して現役続行。ところが怪我で昨年はほとんど活躍できず限界説も囁かれた今期、スーパーサブとして常に安定した活躍をし、高度なテクニックと的確な状況判断で何度となくチームを救ってきた。その彼が、最後の最後に、最高の仕事をした。バルセロニスタにとって、何物にも代え難い最高のお別れの挨拶だった。

<後日譚>
 やや蛇足になるが、やはり記しておこう。この試合があるプレーヤーの将来を左右することになった。試合翌日、アンリがアーセナルへの残留を発表したのだ。実は彼は来期のバルサ入りが内定していた。ロニーとアンリのホットラインとは反則だとも思えるが、それはそれで見てみたい思いに駆られる。しかし、この決勝戦でのアーセナルの奮闘と、サポーターの熱い思いが、(そしておそらくバルサの強さが)、彼を翻意させたのだろう。アーセナルは伸び盛りのチーム。アンリの選択が彼にとって幸いとなることを祈る。


 ふぅーー。やっとおわった…。今晩からワールドカップが始まるってのに、今頃なにやってんだ、っていう気はしたんだけど、あんまり嬉しかったんで、最後まで書き上げちゃいました。ここまで読んでくれた人はあんまりいないだろうけれども、お付き合いくださってありがとうございます!!
 さあ、明日からはワールドカップモードですよお! って誰も期待してないか(笑)
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by redhills | 2006-06-09 17:37 | サッカー

●バルサの冒険・最終章 「約束の地」~vsアーセナル(3)

<封じられた切り札>
 騒然となるスタッド・ドゥ・フランス。憮然とするレーマン。カーンからドイツ代表の正ゴールキーパーの座を奪い絶好調だった絶対的守護神が、試合半ばでピッチから姿を消す。しかしハウゲさん、赤札出し過ぎ!実はあのチェルシー戦でデル・オルノを退場にしたのもハウゲさん。これも何かの因縁か(まあ、あれは完全なレッドものだったけど)。

 この退場はヴェンゲルに大問題を突きつけた。彼の当初のゲームプランはおそらくこうだ。後半20分くらいまでは0-0で乗り切る。その間にゴールが奪えれば儲け物。終盤、バルサが攻め疲れてきたところでアタッカーを投入し、鋭い攻め手を繰り出して1点を取り、逃げ切る。
 レーマンの退場がもたらした大問題とは、その最後の詰めで使うジョーカー、切り札が出せなくなってしまったことにあった。つまりはデニス・ベルカンプを出すチャンスがなくなってしまったことを意味していた。

 確かに交代枠はまだ2枚ある。彼を出せないわけではない。しかし、相手は超攻撃的なバルサである。11人で守るのも至難の技なのに、1人少ない10人で残された70分間を守らねばならない。まず、守備の負担が過大になり何人かの選手は入れ替えざるを得ないだろう。それに、負傷交代の可能性もある。誰を下げるのか、どうやって守るのか、そして、どうやって得点するのか。ヴェンゲルはあれこれ計算をしなおしたであろう。

<作戦変更>
 レーマンの代りのキーパーを入れるために誰を下げるか。ヴェンゲルが交代を命じたのはピレスだった。これから続くハードな守備に耐えられないということなのだろうか。無表情にベンチに座るピレス。ワールドカップに続いてCLも奪われてしまった彼の胸中を思う。

 攻めの起点ピレスを失ったことで、アーセナルは完全に守備的な布陣を敷く。アンリとリュングベリ以外の7人がきれいな2本のラインを形成し、それらがボールの位置に合わせて生き物のように上下し、見事な連携を見せる。エトオとジュリは孤立し両サイドは固く閉じられる。ボメルが高い位置で仕掛けるが、デコは下がり気味の位置で不安定なディフェンスを補強する。

 36分、右サイドを突いたエブウェがプジョルと競り合って倒れる。ビデオでは完全なシミュレーションだったが、審判はプジョルのファウルをとる。いやな位置のフリーキック。アンリが蹴ったボールにキャンベルがドンピシャに飛び込んで、アーセナルが先制する。ここでもオレゲルが振り切られていた。チェルシー戦とそっくりの展開となる。

 ますます守備的になったアーセナル。リュングベリもディフェンスに入り、4人のラインが2つ出来上がる。ほとんどの時間が敵陣で過ぎていくが、こうなると、そもそもピレス封じのために置いているエジミウソンが浮いてしまう。41分の2度目のロニー、エトオのホットラインからの決定的シュートも、キーパーのファインセーブでポストに当る。

<壁をこじ開けろ!>
 後半になってやっとバルセロニスタの待ち焦がれていた男が登場する。エジミウソンアウト、イニエスタイン。スペイン代表にも選出された彼はすぐさま、マルケスからのパスの基点となり、エトオやロニー、デコにビシビシとパスを通し始める。バルサの攻撃が一気に滑らかになる
 ライカールトは、アーセナルの堅固な2枚の壁をこじ開ける手をさらに打つ。60分、ボメルに代わりラーションが入り、センターフォワードに張ってトゥレとキャンベルの2人を惹きつける。彼がいることで左右両サイドの圧力が弱まると共に、トップ下のロニーへのプレッシャーも弱くなる。チェルシーを崩したあの作戦だ。加えてイニエスタのおかげで守備から開放されたデコも攻撃に積極的に参加してゆく。攻め続けるバルサ。10人になって50分近く。積み重なる疲労もあり、アーセナルの2枚の壁は徐々に崩れ、後退し、間隔も狭まってゆく。

 攻められ通しでは心も体も持たない。死力を振り絞っての一撃が放たれる。アンリが、リュングベリが、スピードを生かした速攻でオレゲルを、プジョルを、マルケスを何度も振り切りゴールへ迫る。スライディングタックルをヒラリヒラリとかわすアンリは牛若丸のようだ。66分、混乱したオレゲルがリュングベリにボールを奪われキーパーと1対1になるが、バルデスが好セーブで弾き出す。68分、オレゲルについにイエローカードが出た直後、今度は左サイドでジオが転倒しアンリがフリーでシュートを放つも、またしてもバルデスが間一髪のセーブ。刺すか刺されるか、ギリギリの攻防が続く。
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by redhills | 2006-06-09 15:57 | サッカー

●バルサの冒険・最終章 「約束の地」~vsアーセナル(2)

<キレキレの危険な男>
 プレミアリーグでは流麗なパス交換からの攻撃を旨としているアーセナルが、果たしてバルサ相手にどう戦うのか。バルサはいつものように中盤を支配してポゼッションサッカーを展開できるのか。注目していた矢先、あの男がいきなり見せた。

 2分、右サイドを上がったエブウェがパス交換からあげた緩いセンタリングが、ワンバウンドでバルサゴール前に。これにアンリが反応。チョン、と右のつま先で触れると、ボールはフワリと浮いてバルサのゴール前へ。体を反転するアンリ。背後についていたマルケスが一瞬のうちに置き去りにされる。すると目の前にはバルサゴールが大きく口を開けていた。
 シュートはバルデスの飛び出しにより間一髪で防いだが、その直後にはデコのチェックを軽々とかわしてのミドルシュートがゴール左隅を襲う。いやはや、何と言うキレだろう!!

 ティエリ・アンリ。現役選手の中ではシェバと並んで最高のストライカーだと思う。あらゆるパスを受け止めるトラップ技術、ディフェンダーを振り切るフェイントとスピード、そしてシュートの強さと正確さといった、フォワードに求められる技術のすべてを持っている。彼のシュートは本当に特殊で、軽く足を振っただけなのに、ものすごく鋭い、地を這うような弾道を生むことができるのだ。それだけ足腰が強靭なのだろう。
 しかし彼の最大の特徴は、その賢さ。ディフェンダーとの駆け引きはもちろん、状況判断に優れており、自らが得点をするだけではなく、自分を囮に周りを使うことも非常に巧みで、アシストも非常に多い。唯一、メンタル面での弱さが指摘されてきたのだが、今期は若手中心のアーセナルでキャプテンとしてリーダーシップを発揮、人間的にも成長した。テクニック、頭脳、メンタル、すべてが超一流という怪物が、その牙をむく。いやあ、危険だ。危険すぎる…。

<サイドアタッカーの意地>
 いきなり見せ付けられた、あまりのアンリの調子の良さにバルサの最終ラインがびびってしまったのか、立ち上がり、どうも不安定な守備が目立つ。それに、これがCL決勝のプレッシャーなのか、攻撃もいつもと違う。

 前半はいつも左サイドで張っているロニーがセンターにいて、エトオが左サイドをしきりに突破しようとしている。アーセナルの右サイドはエブウェとトゥレのコンビだが、彼らは2人ともコートジボワール代表であり、カメルーン代表のエトオとは、ワールドカップ予選で対決している。直接対決ではカメルーンが2勝したのだが、結局ワールドカップに出場するのはコートジボワールとなった。エトオにとって、この2人の壁は意地でも突破したいのだろう。執拗に仕掛けるものの、エブウェとの1対1にまったく勝てない。

 右サイドでも攻防が繰り広げられる。ジュリ対コール。フランス代表に当然選ばれると思っていたところが予想外の落選に憤っていたジュリにとって、大怪我からシーズン最終戦に復帰し、イングランド代表にも選出されたコールは、自分の実力を証明する格好の相手だったろう。ミラン戦でのミラクルゴールもあって好調を維持しており、こちらは何度も突破してアーセナルゴールへと迫る。が、レーマンの前にゴールを割るまでには至らない。

<分岐点>
 ではロニーは何をしているのかというと、何もしていない。彼がボールを持つと、2人のボランチとセンターバックのトゥレまでもが激しく体を寄せてくるためだ。バルサは彼のみにボールを集めずに、マルケスやジオがジュリめがけて長いフィードを試みる。逆にアーセナルも、アンリへのチェックが格段に激しくなり、なかなか前線にボールが落ち着かない。そんな中、試合の流れを決めるプレーが出る。

 17分、初めてロニーからエトオへのホットラインが通る。ディフェンダーが振り切られエトオが加速したとき、危機を察知して飛び出したレーマンがエトオの足に手をかけた。しかもペナルティーエリアの外で。転倒するエトオ。こぼれたボールをジュリがゴールへと流し込んだが、ハウゲ主審はそれを無視し、レーマンを退場処分にした。CL決勝戦で初めて出されたレッドカードだった
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by redhills | 2006-06-09 13:20 | サッカー

●バルサの冒険・最終章 「約束の地」~vsアーセナル(1)

<夢の対決>
 ヨーロッパ最強クラブを決める戦い、UEFAチャンピオンズリーグ(1992年まではチャンピオンズカップ)の第1回の決勝戦から50年。カップが再びパリに戻ってきた。
 記念すべき50回目の節目の決勝戦は、文句のない「夢の対決」となった。われらがバルサと対戦する相手は、1886年創立、サッカーの母国イングランドプレミアリーグ優勝13回、智将アーセン・ヴェンゲルのもと、ティエリ・アンリを中心とした華麗なパスワークを駆使した攻撃で観る者を魅了する、名門アーセナルだった。

 両クラブはここまで、CLをまったく同じ8勝4分無敗という成績でここまできた。つまり負けを知らずにきたのだが、その勝ちっぷりは対照的だ

 アーセナルは過去のヨーロッパクラブ戦では目だった戦績がなく「内弁慶」と言われてきたが、今年はベスト16ではレアル・アドリーを、準々決勝ではユベントスを下し、尻上がりに調子を上げて決勝まで勝ち上がってきた。特筆すべきは、その驚異的な守備力であり、何と昨年9月27日のアヤックス戦以来1点も許しておらず、10試合連続無失点を続けている。全試合を通じてもたったの2失点しかしていないという、「もっとも守備の堅いクラブ」である。
 国内リーグでは世代交代を進めながらの戦いを強いられ苦戦したが、若手の抜擢が成功し、最後に4位まで順位を上げた。若く、伸び盛りの選手が多く、試合をするごとに成長している。ほぼ独走で国内リーグ2連覇を達成し、チームがその頂点を迎えつつあるバルサと違って、発展途上のチームである。それだけに、勢いに乗ると怖いものがある。

 片や我がバルサはレアル・マドリーと並んで、ヨーロッパカップ戦の通算勝利数が1位であり(219勝)、また今期のCLにおいては、12試合で24ゴールを奪い、無得点に終わった試合は3試合しかないという、「もっとも攻撃力のあるクラブ」である。
 つまり、この対決は「最強の攻撃力」と「最強の堅守」との対決、チェルシー戦に続く、「盾と矛のたたかい・PART2」なのだ。そのうえ、両チームには、ロナウジーニョとアンリという世界最高のアタッカーと、彼らを支える素晴らしいバイプレーヤー達がおり、勝敗だけでなく、そのプレーも興味が尽きない。まさにヨーロッパの頂点を争うにふさわしい、贅沢な一戦となった。

<パリの22人>
 2006年5月17日。パリの空は曇っていた。50周年記念セレモニーが終わり、優勝カップ(通称ビッグイヤー)の置かれた脇を、選ばれた22人の戦士が入場してくる。

 先発メンバーを見て驚いた。イニエスタがいない!?何があったの??バルサTVの金子氏も同様に驚いていたけど、怪我とかではないらしく、ひとまず安心。しかし、何で今一番輝いている才能をこの晴れの舞台に立たせないのか、理解に苦しむ。中盤はエジミウソンをボランチに、左デコ、右ボメル。あとはミラン戦と同じ。うーむ。ラーションみたいに、スーパーサブとして使うつもりなのか。
 アーセナルは、GKレーマン、DFは左からコール、キャンベル、トゥレ、エブウェ、中盤はジウベウト・シウバとセスクのダブルボランチで、その前にピレスとフレブ、左に張り出すウイングにリュングベリ、そしてアンリがトップ。変則的な4-4-2か。

 22人のうち、なんと16人がワールドカップに出場するという、なんとも豪華なメンバーが揃った。ちなみに残りの6人は、バルデス、オレゲル、エトオ、ジュリ、ピレス、フレブ。出場選手の発表は2日前に締め切られたばかり。彼らにとってはこのパリの地こそが今期最後の晴れの舞台である。内心忸怩たるものがあっただろう。特に、フランス人である、ピレスとジュリにとっては。目立ちたがり屋のエトオだって、悔しいに違いない。いや、22人の誰しもが特別な思いを抱いているだろう。そんなことを思っているとほどなく、主審の笛が鳴った。
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by redhills | 2006-06-09 00:24 | サッカー

●バルサの冒険・その3 「トラウマ」~vsミラン(4)

<進め、パリへ>
 1週間後の4月26日のカンプ・ノウは、試合前から、自分たちをCL決勝戦の地・パリへ連れて行ってくれることを信じる10万人の大歓声に包まれていた。スタンドを埋め尽くしたブラウグラーナ(青とえんじ)のチームカラーが映える。思いはひとつ。我がイレブンを後押しすることだけだ。

 メンバーの大きな変更はない。バルサはオレゲルの代わりにベレッチが先発右サイド。ラーションは復帰したが、あのスーパーゴールが認められたのか、ジュリが先発。そして、出場停止が解けたデコが入った結果、イニエスタとの夢のコンビが実現する。ミランも第1戦と違うのはただ1点、ジラルディーノに代わってインザーギが復帰してシェバと2トップを組んだこと。ほぼベストメンバーと言ってよい。

<攻め合い>
 開始早々、いきなり見せてくれる。中盤でロニーが出したパスを読んでカットしたピルロが攻撃に転じようとしたとき、素早くデコが彼を追った。逃げるピルロ。と、その先にいたイニエスタがボールを奪いカウンターを仕掛ける。いち早く反応したエトオに、イニエスタからミランのゴール前へ必殺のスルーパスが突き刺さる。シュートはジダのファインセーブに阻まれたが、この試合の支配者が誰なのかをしっかりと示したシーンだった。

 先週戦って手の内は読めていることもあってか、どうも延長戦を見ているような錯覚に陥る。プジョルvsシェバ、カカvsエジミウソン、ピルロvsイニエスタ、ロニーvsスタム、ジュリvsセルジーニョ、そしてデコvsセードルフの戦いが繰り広げられる。より一層マンマーク色が濃くなり、エジミウソンはカカを、スタムはロニーを追い回す。
 ミランの攻め手は第1戦同様、右サイドの空いたロニーの穴を突くスタムの突破。再三上がって、ガットゥーゾと2人でチャンスを作る。だが、逆にスタムが上がったところをバルサもカウンターで狙う、スリリングな展開。
 左サイドは、セードルフがデコに押さえられ、セルジーニョもジュリのサイド攻撃に手を焼いて上がることができない。中央はピルロがイニエスタにマークされ、まともにボールに触ることすらできない。思うように試合をコントロールできないピルロはイライラし、守備でも後手に回りファウルが目立つ。前半はバルサ押し気味のうちに0-0で終わった。

<読み合い>
 後半。このままだと負けるのはミランの方だから、ミランは対策を講じる必要があったが、目立った変化は見られない。しかし厳しいプレッシャーを間一髪で潜り抜けて、49分、カカ→ピルロ→シェバ→セードルフとボールが渡り、最後にシェバがヘディングシュートを放つもキーパーの正面を突く。53分にはバルサの速攻。ロニーからの糸を引くようなスルーパスが右サイドへ。走りこんだジュリが深くえぐってゴール前にボールを送る。そこに待っていたのはベレッチ。ボールに触ればゴール、という場面だったが何と空振り!!お互いに点が取れない。ただ、敵地で勝利を収めているバルサは決して攻めに人数をかけず、インザーギらの動きに対する注意は怠らない。

 ピルロのイライラは解消されてはいないものの、ボールを受けるポジションを上げたり下げたりしてマークをかいくぐるに従ってミランの時間帯がやってくる。ここでアンチェロッティが動く。コスタクルタを下げてカフーを入れる。へばってきたスタムをセンターバックにして、新鮮なカフーに右サイドを走りまわらせようという魂胆だ。おそらく始めからこの交代は予定されていたのだろう。だが、ライカールトもそれはお見通し。エトオを左サイドに置いてカフーをマークさせるという作戦に出た。加えて攻守にわたって右サイドを走りまくって疲れの出たジュリをラーションに代えることで、セルジーニョを抑える手に出た。一方、アンチェロッティはガットゥーゾを下げてルイ・コスタを投入する。
 ああ、ルイ・コスタ。大好きな選手。もう古いタイプとなってしまった、典型的な技巧派パッサー。フィーゴと並ぶ、ポルトガル黄金世代の中心。カカにポジションを奪われた今、背番号10が悲しい。応援したくなるが、ここは勝負。どうも、カフーと2人で右サイドを崩せ、ということらしいが、ジオがピッタリとついて彼のパスを封じてしまう。

 ミランの打つ手はすべてバルサに読まれており、効果を生まない。逆に、ますますバルサのボール支配率は上昇していき、中盤で好きにボールをまわすようになる。ロニーとイニエスタがメインでパスを交換し、デコが絡む。ミランはまったくボールを奪えない。あせりと疲労の色が濃くなっていく。カカがまったく消えてしまっている。シェバの幻のゴールや、エトオからのドンピシャクロスにラーションが飛び込む!という場面も出たが、バルサ優勢のまま、スコアレスでのタイムアップとなった。2戦合計スコア1-0で、バルサのCL決勝進出が決定した。

 最大の勝因は、「ミランの攻め手を封じる」という、ややバルサらしくない戦術、用兵であり、それは即ち、かつてはミランの一員であり、その体にセリエA的な戦い方が染み込んでいる、ライカールトの存在、ということになるだろう。

<時は来れり>
 そのときはやってきた。12年の時を超え、ヨーロッパの頂点に挑戦するときがついにやってきたのだ。抱き合って喜ぶ選手たち。まるで優勝したかのような騒ぎようだ。カンプ・ノウに凄まじい大歓声が渦巻く。それは、ミランというトラウマを乗り越えることで、決戦の地、パリでの勝利を予感したバルセロニスタ達の喜びの歌であった。
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by redhills | 2006-06-08 10:12 | サッカー

●バルサの冒険・その3 「トラウマ」~vsミラン(3)

<才能きらめくとき>
 命拾いしたバルサだったが、ボール支配率は上がっていき、中盤を支配し始める。それにしても、イニエスタの自信に溢れたプレー振りはどうだろう!厳しいチェックにもびくともしない。そして彼の存在が劇的な変化をもたらす。ボールの持ちどころがロニーとイニエスタの2つに分散したことから、ミランのロニーへのチェックが甘くなり、自由なプレーが増えてくる。そして…。

 56分、イニエスタからのパスを受けたロニーにガットゥーゾが突っかかっていく。厳しい当りだ。大概の選手ならボールを取られてしまったろうし、事実、ガットゥーゾも「取った」と思ったろう。だが、世界最高のフットボーラーはその上を行っていた。とっさに巧みなボディバランスでボールを守り体を反転させる。一瞬、ガットゥーゾがキョトン、とした表情を見せ、試合が止まったような瞬間が訪れる。

 しかし、この時他のプレーヤーと違う時間の流れにいた2人がいた。チラリ、とロニーが顔を上げる。ゴール前でカラーゼを背負うポジションにいた1人の男が走り出す。ロニーから送られたほぼ真後ろからのパスに走りこむ。懸命に足を出すカラーゼ。しかし追いつけない。ゴールをまったく見ずに放たれたボレーシュートは、ジダの頭上を突破し、ゴール上辺に突き刺さった。値千金のアウェイゴール。ジュリだった。メッシ、ラーションの怪我でまわってきたチャンスを見事にものにした素晴らしいゴールだった。

<切ったカードは>
 絶対に与えてはならない先制点を与えてしまったミラン。バルサは勢いを増す。63分、カウンターからのロニーのドリブルシュートがポストに嫌われる。65分、エトオのポストプレーからイニエスタの低い弾道がミランゴールを割ったかに見えたが、ジダがファインセーブを見せる。何か手を打たねば試合が一方的になるおそれも出てきた。

 ついにアンチェロッティは決断を下す。66分、ピルロOUT、マルディーニIN。マルディーニが左サイドバックに入り、セルジーニョが中盤に上がる。ボランチの位置にセードルフが入った。この交代からはセルジーニョの突破が予想された。チェルシー戦を見ても分かるとおり、オレゲルはスピードに難がある。すかさずライカールトも動く。70分、ジュリに代わってベレッチが入る。スピードのある右サイドの守備的選手をセルジーニョにぶつけて芽を摘むつもりだ。2人の戦術が火花を散らす

 カードは続いて切られる。73分、ガットゥーゾに代わりアンブロジーニ投入。合わせるようにバルサも74分、オレゲルに代わりモッタ。フォワードを1人増やしたミランに対し、バルサは中盤を厚くして対抗する。76分、疲れの見えたスタムに代わりカフーが入り、改めて右サイドから攻めあがるが、バルサもジオが上がらず、ケアは怠らない。

 ミランは3枚のカードをすべて切ったが、中盤で組み立てるプレーヤーがおらず、どうしても攻撃が単発的になり、手詰まり感は否めない。時間だけが過ぎてゆく。

<誰もが見た、それだけ>
 80分、カカがついに決定的な仕事をする。ゴール前へフリーとなるパスを供給するも、アンブロジーニが大きくはずしてしまう。天を仰ぐアンブロジーニ。そしてこの後、ボールキープに徹し、ロニーを下げてマキシを入れるなど時間稼ぎに出たバルサのゴールを、ミランはついに割ることはなかった。

 実に密度の濃い試合だった。ゴールチャンスが多くあったわけでもなく、スペクタクルなプレーが見る者の目を奪うわけでもなかったが、非常に高度なレベルでの個人と組織のぶつかり合いが素晴らしい、ベストゲームだった。ミランが悪かったのではない。バルサが良過ぎたのだ。

 勝敗を分けたのは何だろう。考えてみると、バルサがロニーだけのチームではないという事が大きいように思う。そして、実に層の厚いチームになったなあ、というつくづく思う。想像もできない。デコ、シャビ、メッシ、ラーションを欠いて、しかも敵地で、あのミランに勝ったなんて。当然ながらミランはロニーを潰しに来た。ところが、見事にバルサはゴールを奪い、試合を支配した。バルサは完全にトラウマを拭い去ったのだ。功労者をあげるとすればますジュリだろう。そして、やはり決定的な仕事をしたロニー。

 だが、マン・オブ・ザ・マッチはあの男しかいない。そう、アンドレス・イニエスタ。ピルロを封じ、ゲームの帰趨を決めた。この試合は、彼が世界最高レベルのミッドフィールダーであることを証明した試合として長く人々の記憶に残ることだろう。おめでとう、イニエスタ!

 最後に彼の試合後のコメントを。
 「誰もが見ただろう。それだけ」
 そのとおり、確かに僕は見たよ。素晴らしかった。
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by redhills | 2006-06-07 22:52 | サッカー

●バルサの冒険・その3 「トラウマ」~vsミラン(2)

<中盤の攻防>
 序盤のミランの攻勢は、セードルフの活躍がもたらした。豊富な運動量で中盤左サイド(バルサからみて右サイド)でのボメルとの攻防に勝利し、いい位置でボールをキープするとすかさず鋭いパスを供給する。ミランのリズムが良く、立て続けにチャンスが来る。13分、スローインからマルケスがボール処理を誤ったところを、ジラルディーノがうまく体を入れてシュート!だが惜しくもサイドネット。その直後には中盤でのボール奪取から、セードルフのアーリークロスに反応したシェバがヘディングシュート!完全に裏を取られたが、これはバルデスが好セーブで弾き出す。いやあ、やっぱりバルサの最終ラインじゃあ、ミランを押さえ込むことは難しい。今日は特に、なんか上っついてるっていうか、いつもよりもミスが多くて冷や冷やする。

 ミランの攻勢に対応するため、バルサはマークを厳しくしてゆく。特に、カカにはエジミウソンがマンマークに近い形で追いかけるようになる。だが逆にロニーも「猟犬」ガットゥーゾやスタムの執拗なマークに得意の左サイドからの攻撃を封じられ、いつものきらめきが見られない。20分ごろからミランの攻勢も止まり、ゲームは一進一退になってゆく。
 そんな中、面白いプレーが出る。カカが攻撃を組み立てようとしたところを素早く囲いこんでボールを奪い、ドリブルで敵をひきつけてから、エトオに決定的なスルーパスを通した選手がいた。遠くからのテレビ映像でもすぐわかる色白の21歳、イニエスタだった。このプレーが合図のように、イニエスタが攻守に顔を出し始める。彼が目立ち始めるのに従い、少しずつ攻守は入れ替わり、バルサが攻め込む場面が増えてゆく。が、両チーム無得点のまま前半は終えた。

<ピルロシステム>
 イニエスタが中盤で自在に動き始めるとともに、輝きを失っていった選手がいた。アンドレア・ピルロだった。これはミランにとって、バルサに点を奪われるよりもはるかに重大な問題であったと思われる。

 アンチェロッティの作り出したミランの4-4-2のシステムは、別名「ピルロシステム」と言われている。これは言うまでもなく、ミランというチームが、この27歳のボランチ(守備的ミッドフィールダー)を中心に組み立てられていることを示している。つまり、彼こそがバルサにおけるデコに値するような存在であり、チームの攻守の要なのである。
 スペインと違って、常にディフェンシブに戦う戦術が発達しているイタリアでは、ボランチが、守りを統率してボールを奪い、味方が奪ったボールを攻撃へと繋ぐパスを出すことで、一気にゴールを陥れるというスタイルが求められる。優れたボランチは「レジスタ(演出家)」として中盤に君臨し、ゲームを支配するのだ。そしてピルロこそがその代表格であり、広い視野と優れた状況判断、そして正確無比なロングパスで、ミランの攻守を支えているのである。だから、ピルロが機能しなくなる、ということは、「ピルロシステム」の崩壊を意味し、すなわちミランの戦術が破綻したことに他ならない。ミランにとって深刻な事態が生じつつあった

<右を突け!>
 後半開始。メンバーに変更はない。いつものように、バルサは後半になるとフォワードの3人がより自由にポジションチェンジを行うようになってゆく。そして、イニエスタがロニーと自在にパス交換をし始める。左サイドでの動きを封じられていたロニーは中央付近でボールに触ることが多くなり、また、ポジションを下げてミランの中盤の圧力を避ける動きが多くなる。

 では、ピルロを封じられたミランは守り一辺倒になったのか。まさか!ミランはそんなチームではない。ハーフタイムにアンチェロッティが出した指示は「右サイドを突け!」だった。
 4-3-3でワンボランチという攻撃的システムを採るバルサの穴は、ロニーがいる左サイドだ。通常は彼をフォローするためにサイドバックのジオが頻繁に上がっていく。しかもロニーはディフェンスをしないので、大きなスペースが空くのだ。そのスペースを、何度となくスタムが上がっていく。効果はすぐ表れた。50分、右サイドからのパスを受けたシェバからカカ、そしてジラルディーノへと、すべてワンタッチプレーで素晴らしいパスが通る。シェバにボールが入る瞬間にカカが動き出す、そしてそれに反応するジラルディーノ。間一髪でボメルが体を寄せ難を逃れたが、ミラン最大のチャンスだった。カカがパスを受けたとき、キーパーと1対1だった。パスを選んだカカの判断は正しかったか、疑問が残る、悔やまれるプレーだったろう。この1点が入っていれば、ゲーム展開はまったく違ったものになっていただろうから。
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by redhills | 2006-06-07 21:37 | サッカー



赤坂日記・・・赤坂在住の"Akasakan" リトルが、東京のへそで日々の思いを綴る。
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