"the Akasakan diary"    ~リトル君の赤坂日記

<   2006年 07月 ( 5 )   > この月の画像一覧

●たったひとつの誤算(W杯23日目)

ポルトガル 0-1 フランス

 ルイス・フェリペ・スコラーニにとって、痛恨の判定だったろう。そしてそれは、彼の運が尽きた瞬間だったのかも知れない。

 前半32分。マルーダからトップのアンリにボールが入る。ワンタッチしてアンリがペナルティーエリアへと入る。リカルド・カルバーリョとのマッチアップ。アーセナル対チェルシーが再現される。素早く身を寄せたカルバーリョは転がるボールを右足で蹴りだそうとした。だが、アンリの右足がボールに触れる方が一瞬早かった。絶妙の切返し。カルバーリョは空振りしてしりもちをつきそうになり、空中でバランスをとるために本能的に左足を少し上げた。これは仕方の無いことだった。だが不幸にもそこにはアンリの右足があったのだった。倒れるアンリ。主審は迷わずペナルティー・スポットを指差した。6年前のヨーロッパ選手権のときと同じくジダンが落ち着いて決める。この1点が劇的に試合の流れを変えてしまった

 それまで、試合はどちらかというとポルトガルが押していた。両チームはフォーメーションも4-5-1で同じなら、センターでボールを散らす選手(ジダン、デコ)の両脇をスピードのあるドリブラー(リベリー、マルーダそしてフィーゴ、ロナウド)が駆け上がり、ここぞ、というポイントでボランチ(ビエラ、マニシェ)が攻撃参加する、というパターンも同じという、よく似たチームなのだが、ここまでの全体的なパフォーマンスはポルトガルの方が良かった。

 ジダンにはコスティージャ、デコにはマケレレがそれぞれまとわり付いて自由なプレーをさせないようにケアしていたが、ドリブラーに対する対処においてフランスはやや後手に回り、しばしばロナウドに危険な地域へと侵入されていた。フィーゴもベストコンディションではなかったけれども、それなりに老練な仕掛けでアビダルを苦しめていた。先制されるまではフェリペの思い描いたとおりのゲームだったろう(もちろん、ドメネクにとってもそれ程悪い状態ということでもなかったわけだが)。

 しかし、フランスに1点が入ったことで状況はまったく変わってしまった。連戦の疲れからか、ジダンを始めとする前線の4人の動きはブラジル戦のような鋭さは無かったが、後ろの6人は相変わらず素晴らしく機能していた。危険だったロナウドの突破についても、サニョルが攻め上がらなくなったのでテュラムあるいはビエラと2人で対応できるようになり、徐々にポルトガルは攻め手を失っていった。パウレタが全くポストプレーができなかった(つまりテュラムやギャラスに完全に封じられた)ため、ポルトガルは完全に手詰まりになり、最後の5分間のパワープレイまで、フランスの6人を崩せなかった。ただでさえ堅牢なフランスのディフェンスにしっかりと引いて守られては勝機は無かった。それ程に、あの判定は重く、大きなものだった。フェリペの連勝もついに12で止まった。

 決勝戦。さて、イタリアとフランス、一体どちらが相手の守備を崩して点を取るのだろうか。一ついえることは、今日のフランスの前線の出来ではイタリアを崩すことは難しい、ということ。一段上のパフォーマンスが求められよう。ブラジル戦の動きができれば、フランスに2度目の栄冠がもたらされ、ジダンは負けることなく引退するということになるだろう。
b0047859_19515010.jpg

[PR]
by redhills | 2006-07-06 07:10 | サッカー

●ジンクス対決(W杯22日目)

ドイツ 0-2 イタリア

 優勝候補の一角、アルゼンチンを撃破して優勝へ向けてまたまた加速したドイツがイタリアの青い波に呑み込まれた。

 不幸な事件によって守備の要であるフリンクスを失ったドイツだったが、イタリア戦を行うドルトムントは、代表戦で過去一度も負けたことの無い縁起のいいところ一度もワールドカップで勝った事のない天敵、イタリアを討ち取るにはこれ以上の舞台はない、はずだった。しかし結果はイタリアの鮮やかな勝利。またしてもイタリアに勝つことはできなかった。

 120分の激闘の末、終盤の連続失点によって敗れてしまったドイツだったが、試合運びは思惑通りだったように思う。なぜなら、攻めに出ずにイタリアにボールを持たせたから。

 サッカー強国の中でも並外れたマゾ体質(!?)のアズーリは、攻められて押し込まれて、見ている者をハラハラさせておいて勝つのが本来の姿。リッピが作り上げた攻撃的な布陣も、注意深いドイツのディフェンダーにトニが抑えられると打つ手がなく、ボールだけを持たされて、カウンターも出せず妙な試合運びをしてしまった。

 とはいえドイツもドイツで、苦手意識のためか試合運びが余りに消極的。グループリーグのころの勇ましさがすっかり影を潜めてしまい、ほとんどゴールの予感がしない。想像通り、クローゼとポドルスキはがっちりマークされてしまうし、バラックは守備意識が高すぎて攻撃参加が少なすぎる。一度だけポドルスキがドフリーでヘディングする場面があったが、ドイツの本当のチャンスはあの一度だけ。途中投入したシュバインシュタイガーとオドンコルのサイド攻撃も効き目がなく、なんか両チームとも攻めがいまいちで、後半からはやや退屈な試合になってしまった。

 しかし延長に入ると、リッピは守備が安定しているのを確信したうえで、イアキンタとデルピエロを投入してサイド攻撃を活性化させる。これが効いて、ジラルディーノも加えたパワープレイが最後に実を結んだ。グロッソのあのシュートは誰にも止められない。あの場面であそこに蹴れる選手がサイドバックにいることが勝敗を分けた。2点目はいかにもイタリアらしいゴール。1点入れたことで十八番のカウンターを出す出番が来た。チェコ戦でのインザーギの役は、今度はデルピエロにまわってきた。策がズバリ当って、リッピにとってはさぞ監督冥利に尽きる試合だったろう。

 決勝戦。ここまできたら、フランスでもポルトガルでも同じだろう。守備が破綻しない限りイタリアはいい勝負をするだろう。
[PR]
by redhills | 2006-07-05 23:33 | サッカー

●メッセージ

 ワールドカップも準決勝前のブレイクだし、ジーコ・ジャパンについて書こうかな(あと、オシム・ジャパンについても)…と思っていたところに飛び込んできた、中田現役引退のニュース。代表引退はあるかもしれないな、とは思っていたけれど、プレーを辞めてしまうとは思わなかった。

 彼のメッセージを読んだ。

 気恥ずかしいくらい率直に、彼のサッカーへの愛情、日本のサポーターに対する感謝、そして、それが故の苦悩が綴られていた。

 僕は、今回のワールドカップでの日本の戦いぶりから、その最大の問題はメンタルだと思うようになったけれども、戦う心構えがまるで出来ていないチームの中にあって、中田だけは、まるで孤峰のように、世界で伍してゆくのだ、という強いメンタルを持って試合に臨んでいるように見えた(強いてあげればあとは川口くらいか)。

 メッセージからは、中田自身が、いかにそれ(メンタル)の重要性を身に沁みて感じ、それを他のメンバーに伝えようと苦心し、でも結局うまくいかなかったことへの失意の思いが伝わってきた。思いを伝えられず悩むくだりに親近感を覚えた。クールさを装う奥底にサッカーへの思いを秘めていたという告白に、ハッとした。そして、最後に、その守り通してきた思いがこらえきれずに溢れてきたという言葉に感動した。

 彼は孤立無援で戦ってきた。 

 本当にもどかしかったろう。
 無念だったろう。
 だがそれでも彼は、誰も付いてこないなか、最後までピッチの上でそれを自らの行動で示し続けた。

 本当にがんばった。
 引退は残念でたまらないけれど、お疲れさん、と一声掛けてあげたい気持ちで一杯だ。

 でもおそらく、どんなねぎらいの言葉もいらないのだ。

 彼の残したものを無駄にしないこと。
 それこそが、彼の貢献と無念の思いに応える唯一の術なのだ。
 そう思わなければ、やってられないじゃないか。

 改めて何かがこみ上げてきた。
[PR]
by redhills | 2006-07-03 23:32 | サッカー

●ジダンの放物線(W杯21日目)

 準々決勝の残り2試合が行われた。イングランド対ポルトガルは、後半の早い時間にルーニーを退場で失ったイングランドが、堅守でポルトガルの得点を許さず、延長戦も凌ぎきったものの、PK戦で力尽きた。ポルトガルのスコラリ監督のワールドカップでの連勝は12に伸びた。注目の一戦、ブラジル対フランスの新旧王者対決は、フランスがジダンのフリーキックにアンリが合わせてあげた1点を守りきり、優勝候補筆頭のブラジルに勝利、4強へ最後の名乗りを上げた。この結果、ブラジル連覇の夢は消え、ベスト4はすべてヨーロッパのチームとなった。

イングランド 0-0(1PK3) ポルトガル

 イングランドにとっては、前回大会と2年前のヨーロッパ選手権で破れたスコラリへのリベンジのチャンス。スタンドでは、試合前からイングランドサポーターの時の声がこだましていた。注目の布陣は、ポルトガルはオランダ戦で負傷し、出場が危ぶまれていたロナウドが出場し、出場停止のデコのポジションにはチアゴが入った。イングランドはやはりルーニーの1トップだった。

 ベスト8ともなると、どのチームも試合運びが慎重になる。このゲームもそうだった。相変わらずイングランドはルーニーが孤立気味。一方のポルトガルも、やはりデコの不在は大きく、ロナウドやフィーゴの単発的な仕掛けに頼る攻撃は驚きに欠け、堅固なイングランドの最終ラインを突破できない。ややこう着状態のまま前半が終わる。

 しかし後半早々、ピッチに衝撃が走った。ベッカム交代。右足を引きずっている。そして続く61分、更なる衝撃がイングランドを襲う。ルーニーへのレッドカード。ただでさえフォワードが足りず、後半のどこかでクラウチを投入してのパワープレイを考えていたエリクソンはゲームプランの修正を迫られる。止む無くコールを下げてクラウチを入れるものの、彼の孤立振りはルーニー以上だった。しかし、ポルトガルの攻撃が手詰まりなのも幸いし、イングランドはハードな守備とハーグリーブスの攻守に渡る活躍で終盤のポルトガルの猛攻を凌ぎきった。

 延長戦。ほぼ完全にボールを支配されている状態で得点を望めないイングランドが30分を守りきり、PK戦に持ち込んだのはさすがだったが、4人のキッカーのシュートコースを全て読んだポルトガルのリカルドの前に、またも涙を飲んだ。イングランドは、最後まで自慢の中盤が評判どおりの輝きを見せることなく、またルーニーも無得点のままドイツを去ることとなった。

ブラジル 0-1 フランス

 「いつブラジルがその本当の力を見せてくれるのか」。世界中が期待した。だが、カルテット・マジコ(魔法の4人)と言われた前線の4人の奏でるハーモニーに世界が酔いしれる瞬間は、ついに訪れなかった。史上最強の呼び声も高かったブラジルがなぜ破れたのか。その原因はベンチの采配にあったように思う。その一方で、これが底力というのだろうか。フランスが会心の試合運びで王者を撃破した。世界最高レベルの戦術と個がぶつかり合った対決は、サッカーの奥深さを示す一戦でもあった。

 この試合、ブラジルはアドリアーノとロビーニョを先発から外し、ロナウドとロナウジーニョを2トップに、そしてカカをトップ下に置いた。カルテットが初めてトリオになったのだ。そのかわりに、ボランチの4人のうち、エメルソンをのぞいた3人を同時にプレーさせた。明らかに守備重視の陣容。王者ブラジルがここに来て自分のスタイルを捨てたのだ。これは驚きであるとともに、パレイラの苦心と不安の表れでもあるように感じられた。

 案の定、攻撃の基点がカカに限定されたために、マケレレとビエラの圧力が1点に集中し、2トップが孤立する。特にロナウジーニョが得意のドリブルを仕掛けるチャンスが全くといっていいほど訪れない。ゼ・ロベルトやジウベウト・シウバがカカのフォローをしようとするが、リベリー、マルーダ、そしてジダンの早いチェックがそれを許さない。中盤の組み立てを省略してサイド攻撃をしようにも、リベリーがしきりにサイドを突破するため、ロベルト・カルロスもカフーも攻め上がれない。中盤を圧倒的にフランスが支配し、ブラジルは有機的な攻撃が全くできないまま、防戦一方で前半を終えてしまう。パレイラの取った作戦の失敗は明らかだった

 後半、フランスの攻撃は鋭さを増してゆく。46分、ジダンのフリーキックがビエラにヒットする。52分、アンリの突破からのヒールパスにビエラが飛び込む。そして57分、左サイドでのフリーキック。ジダンの右足から放たれたボールは、緩やかな弧を描いて無人のファーサイドへ。誰もがその行方を目で追ったそのとき、ただ1人、アンリがボールの落下地点へと到達し、右足でボレーを決めた。大歓声がスタジアムを覆う。公式戦で初めて、ジダンとアンリのホットラインが繋がった。フランスの攻撃力が完璧なハーモニーを奏でた瞬間だった。

 今大会初めて追い込まれたセレソン。前掛かりに攻撃をしてきたが、フランスは全くひるまない。中盤でボールを奪い、リベリーやアンリが何度も突破を仕掛ける。流れを変えるべく、ようやくパレイラが動く。63分、アドリアーノを投入し、ロナウジーニョをトップ下に下げる。カルテットの復活。だが、一度後手に回った流れはなかなか止まらない。逆にフランスは、ブラジルの背後に広がる広大なスペースに、ジダンやビエラらが鋭い矢を放つ。ルシオがアンリを倒し、イエローカードを受ける。時間は刻々と減ってゆく。

 残り15分。今こそカルテットがその魔法の杖を振るう時のはずだった。だが、必死の攻撃もなかなか実を結ばない。焦るパレイラは、何とカカを下げてロビーニョを投入する。だが、ドメネクも抜かりが無い。疲れの見えたリベリー、マルーダをゴブとビルトールに代え、中盤に新たな力を加えて対抗、またペナルティーエリア付辺では、テュラム、ギャラス、ビエラ、マケレレの4人がカルテットを抑え込んだ。とうとうブラジルは最後までゴールを割ることは出来なかった。

 思うに、フランスのドメネクは自分のチームの戦術と力を信じ、ブラジルに対しても普段どおりの布陣で臨んだのに対し、パレイラはよそ行きのサッカーをしてしまったのではないだろうか。確かに持ち前の攻撃力を活かしきれていない状況を変える必要はあっただろう。だが、そこを我慢して、選手たちが答えを見つけ出すのを待つべきではなかったか。はた目には、不本意な内容であっても、王者として余裕の戦いをしていると思われていたブラジルだったが、実際のところ、パレイラはかなり追い込まれていたのではないだろうか。世界最高のタレントを有しながら、結局最後までベストフォームを見つけることが出来なかったブラジルの姿に、サッカーの奥深さを思う。

 逆に、ふがいない試合振りに、噛み合わない攻撃は戦術の誤り故であると厳しい批判に晒されていたドメネクとフランスは、グループリーグ敗退の危機を乗り越えた結果、ジダンを中心にチームの結束力が格段に増し、潜在能力を爆発させた。チームと監督のメンタルの差が勝敗を分けた一戦だった
[PR]
by redhills | 2006-07-02 09:55 | サッカー

●そして誰もいなくなった(W杯20日目)

 ワールドカップ準々決勝2試合が行われた。第1試合、ドイツ対アルゼンチンは、後半先制したアルゼンチンが逃げ切りに入るところをドイツが追い付いて1-1となりPK戦にもつれ込んだが、キーパーレーマンの活躍で開催国ドイツが勝利。4強1番乗りを果たし、優勝に向けて大きく前進した。第2試合、イタリア対ウクライナは、早い時間帯に先制したイタリアが持ち前の守備力を発揮し、シェフチェンコを擁するウクライナに完勝した。今大会無得点だったトニが2ゴールを挙げるなど攻撃陣も調子を上げてきており、4度目の優勝に向け、攻守のバランスが一層良くなってきた。

ドイツ 1-1(4PK2) アルゼンチン

 これがサッカー。そんな感じだった。優勝の行方を占うと思われた一戦は、実に見応えのあるゲームとなった。

 会場はベルリンのオリンピック・スタジアム。ここはサッカー専用ではないためにピッチとスタンドの間に距離がある。また、スタンドもピッチをグルッと囲んでいない(一部切れている)ため、音は外へ抜ける。ミュンヘンに比べてサポーターの声の圧力は低いのは、アウェイのアルゼンチンにとっては好材料だ。

 試合前の両チームの表情はいつになく硬い。特に、リケルメの表情が気になる。驚いたのはアルゼンチンのスタメン。フォワードにサヴィオラでなくテヴェスを、中盤ではカンビアッソでなくルイス・ゴンザレスを、そして右サイドバックにはコロッチーニを入れてきた。ドイツはほぼベストメンバー。

 試合は予想に反して静かに始まったが、その原因はドイツにあった。今までの勢いがなく、いつになくナーバス。アルゼンチンは人数をかけずに中盤で慎重にパスをまわしてゆく。ドイツはアルゼンチンの中盤と前線とを分断するため、バラックを下げ、フリングスとのダブルボランチを形成、ある程度ボールは持たせるもののリケルメを徹底マークし、決定的なパスを入れさせない作戦。ボールはアルゼンチンがキープするものの、有効なパスもほとんどなく、こう着状態で進んでゆく。スタメンに入った3人の動きを見てペケルマンの意図は読み取れた。それは守備力の向上。やはり今大会のドイツの勢いを脅威と感じた彼は、まずはそれを抑えることを優先したのだった。徐々にワンタッチ、ツータッチのパスが増えてアルゼンチンがペースを摑みかけてきたところで前半は終了した。

 後半に入っていきなり試合は動いた。49分、後半最初のアルゼンチンのコーナーキック。今までゴール寄り、ニアサイドへ蹴っていたリケルメが初めて外寄りに蹴った。そこにアジャラが飛び込んでヘディングでゴール。クローゼは競り負けた。今大会初めてリードを許したドイツが攻勢に出る。スタジアムはヒートアップし、ピッチ上でも一気に攻守の切り替えが激しくなった。ナイフを隠し持っての睨み合いから、ついに斬り合いが始まったのだった。

 約20分間、ドイツの攻勢は続いた。オドンコルを投入してサイド突破を仕掛けると共に、バラックもポジションを上げ、クローゼとのホットラインが動き出す。対するアルゼンチンは受けに回りながらも、カウンターでチャンスを作りつつ、強靭なフィジカルと精神力でドイツの圧力に対抗し、必死にゲームをコントロールしようとする。刺すか刺されるかの緊迫した攻防が続く。試合を大きく動かしたアクシデントが起きたのはそんな時だった。69分、アルゼンチンのキーパー、アボンダンシエリがわき腹を押さえてうずくまってしまう。5分前にコーナーキックをセーブしようと飛び出した際にクローゼと接触、膝蹴りを食らっていたのだ。安定したセービングに加え、おそらく世界一と思われる、前線への正確なフィードで「11人目のフィールドプレイヤー」として抜群の存在感を示していた彼の退場は、ペケルマンのゲームプランを大きく狂わせてしまう。トイツが勢いを増すのは明らかだった。

 ここで彼は決断を下す。不動の司令塔、リケルメを下げたのだ。確かにこの試合での彼の出来は悪かった。長くボールを持ちすぎるという悪い癖が出て、攻撃のリズムを失わせていた。特に、後半の苦しい時間帯に何度かあったカウンターのチャンスでの球離れが遅く、追加点の芽を潰していた。だから彼を下げたのは分かるが、問題は代わりに入ったのがアイマールでなくカンビアッソであったという事実だった。これはアルゼンチンが1点を守りきる「逃げ」の戦術へと明確に舵を切ったことを示していた。だが、試合はまだ20分も残っている。しかも相手は不屈の精神で向かってくるドイツ、おまけに開催国だ。この時間帯で、逆襲への武器を捨てて自陣に篭り続けるのは危険な賭けだった

 その不安は的中する。残り12分というところで、最後の交代枠を使ってクレスポを下げてまでして逃げ切り体制を固めた直後に、クローゼに同点にされてしまう。采配ミスは明らかだったが、もうアルゼンチンに打てる手は残ってはいなかった。メキシコ戦に続く延長戦。激しい消耗の中、後半の残り10分と延長戦の30分の間、ドイツの得点を許さなかったのは、紛れも無いアルゼンチンのプライドであり、勝利への執念だった。もしクレスポに代えてメッシを入れていたら、前線でのキープも出来たろうし、カウンターから十分得点のチャンスもあったろう。だが結局、予想外の負傷交代とペケルマンの弱気が試合を分けた。最後のピッチには、リケルメも、クレスポも、サヴィオラも、メッシもいなかったのだった。

b0047859_3342538.jpg

*(追記)この試合、世界で一番有名なサポーターであるマラドーナがテレビに映らないな、
 と思ってみていたら、なんと、入場を拒否されていたらしい(笑)。最後までネタを提供して
 くれたわれらがマラドーナ。ホント、憎めないんだよな。

イタリア 3-0 ウクライナ

 アルゼンチン敗戦の余りのショックに、ゲームは見ていたものの、正直、あまり身が入りませんでした。ですが、イタリアの試合巧者ぶりばかりが目立った試合でしたね。中盤の選手たちによるゲームコントロールが完璧で、2点目が決まるまでのウクライナのチャンスも、カンナバーロやザンブロッタ、ブッフォンの鉄壁の守備を一層引き立てるばかりでした。それにしても、トニのゴールは大きい。組み合わせに恵まれているのは間違いないですが、この感じは間違いなくイタリアに流れが来ていますね。試合後の各選手のコメントなどを聞いても、母国の現状が彼らを奮い立たせている様子が伝わってきます。ドイツが延長戦を戦い、バラックやクローゼが負傷していることを考えると、イタリアは優位に立ったと言えるでしょう。アルゼンチンの予想といい、やっぱり勝敗の予想は難しいです。
[PR]
by redhills | 2006-07-02 00:01 | サッカー



赤坂日記・・・赤坂在住の"Akasakan" リトルが、東京のへそで日々の思いを綴る。
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
フォロー中のブログ
カテゴリ
以前の記事
最新のトラックバック
ライフログ
検索
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧