今日の記事は
・広がる女性外来、配慮細やか~来院促し早期治療 (11面) ・偏在解消、地域・行政一体で~前野哲博氏 (11面) ・妊産婦の脳出血・敗血症への対応~中核病院の2割が不安~厚労省 (38面) の3本です。 患者を女性に限定した女性外来が増えています。生物学的、社会学的要因に注目する「性差医療」の観点から始まった女性外来ですが、日本では01年から始まり、特定疾患の女性だけを専門的に扱う外来も出てきています。 男性の目が気になることに考慮してレディースデイを設けたところ患者が殺到し、終には週6日すべてを女性専用にしてしまった「松島ランドマーククリニック」(肛門科・横浜市)では、医師やスタッフすべてを女性にするなど、女性が来やすいようにという配慮が行き届いています。待合室に女性が多く居るのを見て安心したという声もあり、女性のみという特色が相乗効果でさらに多くの患者を呼んでいるようです。 その一方で、骨盤臓器脱(泌尿器科)など女性特有の病気については専門医が少なく、それが早期治療を妨げ治療の遅れに繋がっているところもあり、まだまだ医師が足りないという実情もあります。 また、特定の診療科に囚われずに女性特有の体の悩みについて総合的に診療しようとする動きも広がっています。富山市にある「女性クリニックWe! TOYAMA」は、乳腺外科や皮膚科、婦人科などがありますが、産科はありません。これは「産婦人科と一括りにされるけれども、不妊で悩む人は妊婦の姿を見るだけでもつらい思いをするから」(種部恭子院長)です。ここでは威圧感を失くすために医師や看護師は白衣を着ず、また予約電話の応対にも気を配ります。 女性外来のある病院はNPO「性差医療情報ネットワーク」のサイトなどで紹介されています。 最近ますます酷くなっている、医師の偏在の問題について、筑波大学病院総合臨床教育センター副部長の前野哲博氏が述べています。 氏によれば、現在の「医療崩壊」を起こした要因は2つ。 1つは研修先を自由に選べるようになった新しい臨床研修医制度で、これはすでに言われていることです。研修医は豊富な症例が経験でき、指導者が多くおり、また交代要員のいる一部の病院を希望するようになり、それが下の学年に伝わってますます助長されているというわけです。 2つ目は勤務医の激務です。当直明けに通常勤務を行っている医師が9割といわれる実情が、少しでも負担の軽い職場を求める動きに繋がっているのであり、氏によればそれは、もともとあった医療制度の歪みなのです。 これを解消するには方法は2つしかない。1つは従来研修医を全体のバランスを見ながら配分していた医局に代わるような仕組みを作ること、2つは魅力的な研修システムを地域が用意することであるとし、それは地域と行政が一致協力しなければ作れない、というのが氏の意見です。 少子高齢化の原因はいろいろ言われていますが、実は、産む所が無い、というのもその有力な原因の1つです。 リスクが高い妊娠・出産を引き受ける中核施設として全国に66ケ所設置されている、総合周産期母子医療センターの診療体制を厚労省研究班が調べたところ、回答した46施設のうち約2割が、脳出血など産科以外の妊産婦の急性疾患は「受け入れ不可能」とし、体制に不安があることが判明しました。周産期医療の最後の砦と位置づけられる総合センターの課題の克服には近くの大学病院などとの連携が必要なようですが、それだけでは十分ではなく、周産期医療のリスクを軽減する政府レベルでの取り組みが必要であると思われます。 #
by redhills
| 2007-08-07 18:00
| ニュース
今回、安倍政権は確かにベタ負けした。では有権者は安倍政権を否定したのだろうか。
まず、与党に投票しなかった有権者は安倍政権を「全」否定したのか、という問題がある。次に、安倍政権の全否定=自公政権の否定なのか、それとも有権者は自公政権はそのままでの首のすげ替えを望んでいるのか、というポイントがある。そして自公政権の否定がなされたというのならば、それはすなわち「有権者は政権交代を望んだのか」「有権者は民主党政権を望んだのか」について考えることを意味する。 これが衆議院総選挙ならば単純だ。総選挙は政権選択の選挙だから、与党が負けて過半数割れとなれば、下野するしか道はない。すなわち政権交代(もしくは政権与党の組み替え)が起こる。しかし参院選は与党が負けても、過半数割れを起こしても、そうはならない。なぜか。それは内閣総理大臣を選ぶのは衆議院だからだ。詳しい憲法講義は本意ではないので割愛するが、日本国憲法においては様々な点で衆議院は参議院に優越した地位を与えられており、その究極が上記の点にある。だから参院選の場合、話はややこしくなるし、こういったことについて考えないとならなくなる。 では本題に戻ろう。有権者は安倍政権を否定したのだろうか。私の答えは「否」である。 有権者の過半は安倍政権を全否定してはおらず、政権の存続を望んでいる。すなわち、政権交代も民主政権も有権者の望むものではない。「ただし」政権の存続は無条件ではない、というのが私の見立てだ。 これは単純な獲得議席や得票を見てもわからないので、マスコミによる有権者の投票行動分析の記事などから推測するしかないのだが、それらから考えると少なくとも、今回の選挙で有権者は政権交代を求めたとは言えないと思える。以下にその理由を説明する。 まずは基本データとしての比例票の動きだ。確かに今回、民主党は比例票で自民党の約1.4倍の票を集めて圧倒的な第1党となった。だがこれはすでに述べたように、以前から見られた傾向なのだ。実際、前回3年前と比べても、自民は1.9ポイント減、民主は1.7ポイント増と、得票率にそれほど大きな変動はない。議席数の差が開いたのはやはり、1人区の勝敗の結果なのだ。これはつまり、「自民党」に投票する人はさほど減っておらず、自民党の支持者はあまり減ってはいないという1つの証左となる。 そうなると投票の「質」を見るしかない。つまりは出口調査の結果だ。 日経新聞によれば今回、無党派層は有権者全体の19%であったというが、これは前回とまったく同じである。そしてそのうちの51.2%が民主党に投票したと回答したが、実はこれも前回とほとんど同じだった。つまり、無党派層については今回、特に目新しい投票行動はなかった、ということになる。となると、「支持政党あり」と答えた人たちの投票行動が差をもたらしたという可能性が高まる。そこで焦点が当たるのが、自民党支持層の投票先だ。 やはり違いはここにあった。今回はなんと、自民支持層の約4割が自民以外に投票しており、民主に流れたのは24%、つまり4分の1に及んでいた。1人区のところで説明したように、これは自民にとって差し引き48%の痛手となる。一方民主はといえば、支持層の約8割を確保した上に、自民へ流れたのはたったの5%しかなかった。これが決定的な差を両者にもたらしたのだ。 このことからはっきりと分かることがある。それは、「今回自民党を惨敗させたのは自民党支持者である」ということだ。それはすなわち、「彼らは民主党が好きで勝たせたのではない」ということなのだ。これこそが、私が「有権者は政権交代を望んでいない」と判断する最大の根拠だ。 もう少し具体的に説明してみよう。 もう自民政権はコリゴリだ、政権交代して欲しい、というのであれば、まず自民支持者が激減しなければおかしい。しかし、比例票を見る限り、そういった傾向は見られない。さらに、民主党が増やした票の多くは自民支持層から奪ったものだったと推測されるが、もし政権交代を有権者が望むのであれば、彼らは支持政党を変えるはずである。ところが、自民支持者は民主党に投票しながらも、依然として自民支持者なのである。この2つの分析から割り出される有権者の「ココロ」はただ1つ、「民主政権は望んではいないが、今回は自民を負けさせた(民主に勝たせた)」しか考えられないのである。つまりは、いわゆる「キツイお灸を据えた」ことに他ならない。 この点については特に、テレビを始めとするマスコミを信用してはならない。彼らは十年一日のごとく、「2大政党制」「政権交代」を叫んでいるが、それはまったく実証データに沿った主張ではなく、反権力、長期政権への嫌悪感といった、彼らマスコミの持って生まれた性質からくるものである。今回も島田紳介氏などがしきりに、「自民にお灸を据えた、なんて甘いこと思わないで下さいよ」などと与党幹部を責めていたが、実際の有権者のココロはまさにその「お灸」だったのだ。 もう忘れてしまった(というか知らない)方がほとんどだと思うが、18年前の参院選の結果を受けて、当時の社会党委員長(党首)だった土井たか子氏が何と言ったか。「山が動いた」と彼女は言ったのだ。マスコミも大はしゃぎで社会党の躍進を書きたてた。だが、その後社会党はどうなったか。それは言うまでもないだろう。社民党は今回の参院選で、たったの2議席しか獲得できなかった。民主党が同じ道を辿らないという保証はどこにもないのだ。 では引き続き安倍政権が続いていくのかというと、そうは断言できない。なにせそこは腐っても鯛、9年前も、そして18年前も、永田町のど真ん中にいた小澤一郎氏である。政界は一寸先は闇。何が起こるかは一切確約できない。だがそこをあえて踏み込んで、今後の安倍政権と政界の行方について考えてみようと思う。(つづく) #
by redhills
| 2007-08-02 09:33
| ニュース
今日の記事は
・高齢者向け賃貸住宅~民間病院の参入解禁~厚労省 (1面) ・自治体病院再建請け負う (夕刊4面) ・ブログで学ぶ企業法務~プロも学生も議論 (夕刊5面) の3本です。 団塊の世代の高齢化と医療法人の経営支援、そして医療費抑制を狙った政府の取り組みです。厚労省は、民間病院を経営する医療法人に、高齢者向け住宅賃貸事業への参入を解禁します。入居者の生活相談に応じたり、容体急変に備えて定期的に安否を確認する見守りサービスの継続的な提供を義務付けたうえで、現在不動産業の兼営を禁じている医療法の施行規則を緩和する通知を出しました。 高齢者専用賃貸住宅(高専賃)は、バリアフリーで高齢者の入居を拒まない賃貸住宅で、国土交通省が05年12月に登録制度を作っています。家賃やサービス内容などの情報開示が登録の条件となっており、全国に1万2千戸余りがあります。現在は有料老人ホームや介護事業などを手がける株式会社や社会福祉法人が参入していますが、主に富裕層向けでありあまり普及していませんでした。 高専賃は老人ホームと違って、入居時に多額の費用がかからず、また医療法人が事業主体となることで入居者の安心感も増すとの狙いがあります。また、医療費増加の一因と指摘されている、医療の必要がないにもかかわらず病院の療養病床で暮らす「社会的入院」を減らすという意味合いもあります。現在全国に38万床ある療養病床は11年度までに6割削減することが決まっていますが、入院している高齢者は自宅に戻るのが難しいとされており、その受け皿にという期待もあります。 また、医療法人にとっても事業の幅が広がって経営に資するとも考えられます。厚労省は他にも、「特別養護老人ホーム」や「老人保健施設」などへの医療法人の参入を解禁する方針で、高齢者向け医療福祉の充実と医療法人の経営支援を早急に進める腹づもりのようです。 自治体の運営する病院の66%が赤字に苦しんでいる中、経営再建に腕を振るう人たちがいます。徳島県病院事業管理者の塩谷泰一氏は減率3病院の収支を黒字にしました。塩谷氏は、地域医療期間との連携強化を目指し、診療所などからの紹介患者受け入れを増やし、高度医療を施すことで診療単価のアップにつなげました。大牟田市立総合病院の経営改善対策室長の肥川一元理事は神戸製鋼所の人事・労務畑での経験を活かし、就任3年で黒字化を達成しました。こういった地味な努力が自治体に求められていると思われます。 買収をめぐる企業とファンドの攻防が日本でも大きなニュースとなっていますが、そういった企業法務の問題を分析するブログが大盛況です。運営しているのは、現場の第一線で活躍する弁護士や大学教授などで、人気ブログには、企業の法務担当者が法務省に問い合わせる代わりに質問を書き込むなど、数多くの閲覧があります。買収防衛策をめぐる見解でブログの間で論争が起きるなど活発なやり取りもあり、わかりやすく、かつ専門性の高い内容が人気の秘密です。 #
by redhills
| 2007-08-02 09:23
| ニュース
今回の与党惨敗の原因は、マスコミ各社が一致してあげているように、消えた年金、政治とカネ、閣僚の失言、の3つだ。でも私が考えるところ、この中で真犯人は1人だ。ではそれは誰か。
ここ数十年にわたる問題である年金はともかく、あとの2つは、政治とカネ(佐田前行革相、松岡前農相、赤城農相)、失言(久間前防衛相)、ともに安倍総理の任命責任が絡む問題だ。政権成立後1年もたたないうちにこれだけの閣僚が問題を起こすという事態は、その政権運営能力や人心掌握が問われるべきものであり、総理は少なからず責めを負うべきものであった。だが私は、これらは選挙戦の流れを後押ししたに過ぎなかったと見る。勝敗を決した原因は年金問題、これに尽きる。 年金記録の問題が民主党の長妻昭議員によって衆議院決算行政監視委員会で取り上げられたのは、実は昨年の12月6日のことであり、同議員がこの問題で安倍総理と対峙し激しい応酬を繰り広げたのは、今年の2月14日のことであった。年金記録の調査をあくまでも突っぱねる政府側の態度には明らかに、ことを大きくしたくないという思いと同時に、これは安倍政権以前から続く問題であり、事務所費や失言に比べれば政権への影響は大きくないと考えていた節がある。そしてそれが初期対応を遅らせてしまう。 だがここから事態は急展開を見せる。社会保険庁の年金データの呆れた管理実態が明らかになり、噂でしかなかった「消えた年金」が現実であることが報じられるや、この問題は飛躍的に世間の注目度を増していく。こうなったときのマスコミは実に恐ろしい。おいしいネタに一度食いついたら、決して放さない。各社は競うように、年金と社会保険庁の実態を暴いていった。急激に高まる批判に政府与党は慌てて対策を練り、総理を先頭に大々的にアピールをしたが、時すでに遅し。「年金不信→政権不信」という激流はもう誰にも止められなくなっていた。 これぞまさに「蟻の一穴(いっけつ)」。半年前に開いた小さな穴の向こうに広がっていた、年金記録のブラックホールに気付いてすぐにフタをしておけば、たとえそれがバンドエイドでしかなかったとしても、有権者はこれほどまでには怒らなかっただろう。だが、安倍総理やその取り巻きにはそれが見えなかった。そして対応を誤った。 加えて、問題が年金だったというのが致命的だった。 「9年ごとのジンクス」というのがある。これは、参院選では9年ごとに与党が大敗すると言うもので、9年前の1998年には橋本政権が、18年前の1989年には宇野政権が同様な惨敗を喫し、辞任へと追い込まれている。今回の安倍政権の命運については後述するとして、図らずも選挙結果はジンクス通りとなったわけだが、言いたいことはそこではない。橋本政権を葬ったのも、宇野政権を倒したのも税問題だったということなのだ。 宇野政権は消費税施行(3%)で、橋本政権は消費税率アップ(3→5%)による景気失速で、惨敗した。昔から税制は最大の政治マターと言われ、権力者が避けたがるのはこのためだが、これは少し考えれば至極当然な話だ。 国民は国の予算がどれだけ増えようが、借金がどれだけ増えようが、実はそれほど気にはしない。実感がないからだ。でも彼らは増税には敏感だ。それはイヤでも実感することになるからだ。だからこそ、自民党は赤字国債を何百兆円発行しても増税は避けたいのだ。もちろん、赤字のツケはいつか国民に巡ってくる。しかし、頭ではわかっていても、それを思い知るのは、実際に手取りが減ったりお釣りが減ったりしたときなのだ。 もうおわかりだろう。年金とは、選挙においては税と同じ効果(破壊力)を持っているのだ。出(税)と入り(年金)との違いはあれ、人間誰しも自分のお金のことにはうるさいに決まっている。それが、信用して預けていたお金がいつのまにか消えてなくなっていたなんてことになったらどうだろう?これが銀行だったらたちまち取り付け騒ぎで破産だろう。そんなとんでもないことを国がやっていたというのだから、有権者が怒るのも当然なわけだ。しかも預けていたのはただのお金じゃない。なけなしの稼ぎの中から、老後の備えにと積み上げてきた大切なお金なのだ。 若干補足すれば、年金問題は数年前からくすぶっていた問題だったというのもある。今までも何度となく争点とされながらも、選挙の行方を左右することにはならなかったのが今回は、その溜まりに溜まったガスに引火して大爆発を起こしたともいえる訳なのだが、ではなぜ今回爆発したのか。実はこれにも理由があるのだ。けっして結果論ではなく、今まではガスに引火する可能性が低かったのが、今回はそれが急激に高まったと断言できるのだ。 それは、同じ年金問題でも今までと今回とでは、まるでコインの表と裏のように全く正反対の性格を持っていたからだ。 どういうことかというと、従来の年金問題は年金負担の増加の問題、つまり家計の支出の問題であり、主に若年世代に影響を及ぼす問題であったのに対し、今回は年金の給付の問題、つまり、高齢世代の家計収入を直撃するものであったということだ。 年金は世代格差が問題であるがゆえに、今までは世代が高くなればなるほど問題意識は低くならざるを得なかった。それも当然の話で、もうもらっている(もしくはもうすぐもらえる)人たちから見れば、年金負担が上がるといっても正直、他人事でしかないのだ。だから、負担を強いられる若年層の政治意識の低さも相俟って、従来の年金問題は大きく選挙を動かすことは無かったわけだ。 それが今回はもらえるはずの年金がもらえないとなったから、安心していた人たちがものすごく深刻な危機感と憤りを感じた。しかも高齢者世代は本来、年金の恩恵を受ける人たちであり、支持をコロコロ変えたりしない保守層の大切(忠実)な票田だったのだ。その人たちが雪崩をうって民主党に投票した。これが地方で自民が票を失った原因だ。おそらく安倍政権は、この「消えた年金問題」の持つ、従来の年金問題との本質的な違いにも気付かなかったと思われる。 年金は、日本では有権者のほぼ100%が利害関係を持つ幅広さという意味でも、お金の問題であり生活に直結するという奥深さの点でも、税と並んで最もデリケートに扱うべき問題であったのだ。それを安倍政権は軽視した。自分の責任ではないと判断し、問題の本質を見誤り、対応が後手に回った。これこそが今回の惨敗の本質だと、私は思う。 ある意味今回の参院選は、「日本の歴史上初めて」、有権者が年金制度の持つリスクを「実感した」その頂点で行われた選挙であった。与党の負けは必定であったというのは、言い過ぎだろうか。 続いて、では有権者は果たして安倍政権を否定したのか、について考えてみたい。(つづく) #
by redhills
| 2007-08-01 08:56
| ニュース
轟く雷鳴は、天の怒りの声だったか。
そんな思いのよぎる結果だった。 安倍政権になって初めての国政選挙(補選はのぞく)となった第21回参議院選挙は、与党の歴史的惨敗に終わった。 自民党は改選議席から27議席減の37議席、公明党は同3議席減の9議席に終わり、そのマイナス分をほぼそっくり奪った民主党が28議席増の60議席を獲得する大躍進をとげた。この結果、民主党が非改選議席とあわせて109議席を占め、自民党に替わって院内最大勢力となることが確定した。またこれにより、自公合わせた与党勢力は105議席にとどまり、過半数(122)を割ることとなった。 まずは数字の分析をしてみよう。 今回、これだけはっきりと勝敗がついたのは、自民党の牙城とされていた、全国29の1人区の多くで与党候補が落選したことが最大の原因だ。小沢党首の地元である岩手はともかく、片山参院幹事長が敗れた岡山や、18年ぶりに自民現職がすべて落選した四国など、自民6勝に対して民主は17勝と、トリプルスコアに近い地すべり的圧勝となった。 1人区の怖いところは、負けた方には何も残らないゼロサムゲームである、ということだ。つまり、奪われたらそれは2倍になって跳ね返ってくるのだ。これは6年前の結果と比べてみるとハッキリと分かる。6年前、つまり今回の改選議員が前回戦った参院選の1人区の勝敗は、自民25勝、民主2勝だったのだ。つまり、この両方の差し引きだけで、なんと40議席も逆転したことになってしまうのだ。 逆風の影響を受けたのは自民党だけではなかった。創価学会の堅固な組織票と徹底した選挙運動で、常に目標どおりの議席を確保してきた公明党がまさかの敗北を喫したのだ。 地方の1人区や2人区では単独で議席を確保できない公明党の戦略ははっきりしている。それは、地方の票を自民党に与えることで恩を売り、代わりに都市部で複数擁立を見送ってもらって確実に議席を押さえるというものだ。しかし今回はそれが目論みどおりに行かなかった。東京はなんとか滑り込んだものの、神奈川、愛知、埼玉など、自民と共存してきた3人区でことごとく民主に2議席を奪われてしまったのだ。 比例代表では以前から民主党は得票数で自民党を上回っていたが、今回はさらに差が広がり、票数の差は700万票、議席数で20対14となった。 まとめれば、自民は地方の1人区で負け、公明は都市部の3人区で負けた一方で、地方、都市で万遍なく民主が勝った、ということになる。また、従来自民系といわれる無所属等についても、今回は秋田、富山、愛媛などは明らかな民主系であり、島根は国民新党で沖縄は地元政党の出身である。自民の候補者一本化の失敗による敗北ではないのである。なので、それらの無所属等は野党勢力であり、与党の敗北は一層色濃くなるのである。 では次に、いったいこのワンサイドゲームを生んだ原因は何だったのか、考えてみよう。(つづく) #
by redhills
| 2007-07-31 17:55
| ニュース
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