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"the Akasakan diary"    ~リトル君の赤坂日記

●備えあれば奇跡が起きる-3

<真の勝因は?>

と、アメリカ側から見れば酷い試合だったのだが、韓国側から見れば、これ以上はないというくらいの会心のゲームだった。
とにかく、打つ手打つ手がすべて、ズバズバ当ったのだ。
初回に先制して優位に立つ。抜擢した2番が3安打して繋ぐ。スタメンから外した4番を早くも3回で代打に出し、見事ホームランを打って突き放す。打者が慣れる前の早め早めの継投でピンチを切り抜ける。守備固めしたところに打球がいく。まさに、ベンチが描いた「対アメリカ必勝プラン」どおりにゲームは進んだろう。いや、プラン以上だったか。

ゲームを見る限り、韓国のベンチの勝利であった。

まず、人を得ている。
キム監督がまず素晴らしい。彼は試合中ほとんど表情を変えない。さすがに勝利が近付いた頃はそわそわしていたが、見事な采配だった。大した戦術家だと思った。
そしてもう1人、このチームの生命線である投手陣をまとめ上げた男を忘れるわけにはいかない。
そう、ソン・ドンヨルだ。彼がいたからこそ、韓国は勝てたと思う。

彼は韓国球界と日本球界のハイブリッドなのだ。
韓国球界の至宝、最高の投手と言われ、鳴り物入りで中日ドラゴンズに入団したものの、1年目は散々な成績に終わる。メンツはまるつぶれで大変な窮地に立たされる。普通ならば腐ってそのまま消えてしまうところなのだがしかし、ここからが彼が本当に傑出しているところだった。2年目は完璧なコンディションでキャンプに臨み、日本語を必死に学び、プライドを捨てて星野監督を始めとする首脳陣のアドバイスに謙虚に耳を傾けて投球ホームを修正した。そして見事に糸を引くような剛球と針の穴を通すようなコントロールを取り戻し、不動のクローザーとして君臨した。そして現役引退後も日本球界に学ぶという謙虚さを忘れず、日本にコーチ留学し、新人監督だった昨年いきなり優勝した、あのソン・ドンヨルが、韓国チームの投手コーチをしているのだ。
つまり、韓国投手陣には日本野球のエッセンスが注入されているのだ。
そしてどうやら、彼が投手起用の全てを任せられているようなのである。やはりキム監督、ただ者ではない。

日本野球のエッセンスといえば、今回の韓国チームの守備力に触れないわけにはいかない。
特に素晴らしいのは二遊間。まずエラーをしないし、守備範囲も広く、打者や投球に合わせて守備位置を細かく変えてヒットを何本も普通の内野ゴロにしていた。守備だけを見れば、西武黄金時代の石毛と辻をほうふつとさせるくらいである。
彼らだけではない。日本戦での勝敗を分けたライトのスーパーキャッチも印象的だが、注目すべきは、初めての球場での、二次リーグ2試合でチームエラーはゼロである点だ。本当に見事なチームを作り上げたと思う。

しかし、である。
いくらベンチが素晴らしい計画を立てても、選手が動いてくれなければ絵に描いた餅だ。
まあ、大概は思ったとおりに選手がやってくれるなんてことはあり得ない。むしろ、そういった、予定外の事態にいかに対応するかがベンチワークとも言えるのだが、信じられないことだが、韓国チームは全員が、本当に全員が、実力を出し切っていた。アメリカ戦を見ていても、ミスといえるものは8回の走塁くらいであった。

でも、これすら、偶然ではない。
まず、選手たちがトップコンディションで大会に入っている。3月初旬と言えば、例年ならば調整期間であるのに、韓国チームは実力を出せる状態にあった。これはアジアラウンドから言えたことで、入念な準備を重ねてきていなければ不可能なことだ。
ここに、スタッフ、ベンチ、選手など韓国球界の、今大会に賭ける決意が読み取れた。


<結論?それとも教訓?>

奇跡は偶然起きるものではない。
奇跡を起こすのは、入念な準備とそれをやり遂げる意志だろう。
by redhills | 2006-03-14 23:44 | 野球
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赤坂日記・・・赤坂在住の"Akasakan" リトルが、東京のへそで日々の思いを綴る。

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