●バルサの冒険・最終章 「約束の地」~vsアーセナル(1)
<夢の対決>
ヨーロッパ最強クラブを決める戦い、UEFAチャンピオンズリーグ(1992年まではチャンピオンズカップ)の第1回の決勝戦から50年。カップが再びパリに戻ってきた。 記念すべき50回目の節目の決勝戦は、文句のない「夢の対決」となった。われらがバルサと対戦する相手は、1886年創立、サッカーの母国イングランドプレミアリーグ優勝13回、智将アーセン・ヴェンゲルのもと、ティエリ・アンリを中心とした華麗なパスワークを駆使した攻撃で観る者を魅了する、名門アーセナルだった。 両クラブはここまで、CLをまったく同じ8勝4分無敗という成績でここまできた。つまり負けを知らずにきたのだが、その勝ちっぷりは対照的だ。 アーセナルは過去のヨーロッパクラブ戦では目だった戦績がなく「内弁慶」と言われてきたが、今年はベスト16ではレアル・アドリーを、準々決勝ではユベントスを下し、尻上がりに調子を上げて決勝まで勝ち上がってきた。特筆すべきは、その驚異的な守備力であり、何と昨年9月27日のアヤックス戦以来1点も許しておらず、10試合連続無失点を続けている。全試合を通じてもたったの2失点しかしていないという、「もっとも守備の堅いクラブ」である。 国内リーグでは世代交代を進めながらの戦いを強いられ苦戦したが、若手の抜擢が成功し、最後に4位まで順位を上げた。若く、伸び盛りの選手が多く、試合をするごとに成長している。ほぼ独走で国内リーグ2連覇を達成し、チームがその頂点を迎えつつあるバルサと違って、発展途上のチームである。それだけに、勢いに乗ると怖いものがある。 片や我がバルサはレアル・マドリーと並んで、ヨーロッパカップ戦の通算勝利数が1位であり(219勝)、また今期のCLにおいては、12試合で24ゴールを奪い、無得点に終わった試合は3試合しかないという、「もっとも攻撃力のあるクラブ」である。 つまり、この対決は「最強の攻撃力」と「最強の堅守」との対決、チェルシー戦に続く、「盾と矛のたたかい・PART2」なのだ。そのうえ、両チームには、ロナウジーニョとアンリという世界最高のアタッカーと、彼らを支える素晴らしいバイプレーヤー達がおり、勝敗だけでなく、そのプレーも興味が尽きない。まさにヨーロッパの頂点を争うにふさわしい、贅沢な一戦となった。 <パリの22人> 2006年5月17日。パリの空は曇っていた。50周年記念セレモニーが終わり、優勝カップ(通称ビッグイヤー)の置かれた脇を、選ばれた22人の戦士が入場してくる。 先発メンバーを見て驚いた。イニエスタがいない!?何があったの??バルサTVの金子氏も同様に驚いていたけど、怪我とかではないらしく、ひとまず安心。しかし、何で今一番輝いている才能をこの晴れの舞台に立たせないのか、理解に苦しむ。中盤はエジミウソンをボランチに、左デコ、右ボメル。あとはミラン戦と同じ。うーむ。ラーションみたいに、スーパーサブとして使うつもりなのか。 アーセナルは、GKレーマン、DFは左からコール、キャンベル、トゥレ、エブウェ、中盤はジウベウト・シウバとセスクのダブルボランチで、その前にピレスとフレブ、左に張り出すウイングにリュングベリ、そしてアンリがトップ。変則的な4-4-2か。 22人のうち、なんと16人がワールドカップに出場するという、なんとも豪華なメンバーが揃った。ちなみに残りの6人は、バルデス、オレゲル、エトオ、ジュリ、ピレス、フレブ。出場選手の発表は2日前に締め切られたばかり。彼らにとってはこのパリの地こそが今期最後の晴れの舞台である。内心忸怩たるものがあっただろう。特に、フランス人である、ピレスとジュリにとっては。目立ちたがり屋のエトオだって、悔しいに違いない。いや、22人の誰しもが特別な思いを抱いているだろう。そんなことを思っているとほどなく、主審の笛が鳴った。
by redhills
| 2006-06-09 00:24
| サッカー
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